エピソード32 BB-63

 大空をコルトリア王国のワイバーンナイト数名が、何かを護衛する形で飛翔していた。

「軍団長、ヴェルモンティア帝国に空襲なんて・・・考えたなぁ」

「ああ、そうだな。おっと、もうすぐだ――」

 攻撃態勢に入ろうとした時、突然軍団長ごと撃墜され洋上に堕とされた。

「グハッ!」

「なにッ⁈――クソ、何処からだ?・・・ナッ‼――ゴハッ!」

 緑の機体塗装に赤色菊の紋章をあしらった紋章が両翼と機体の胴体に描かれていた――そう、これは第二次世界大戦時に日本海軍が開発して大戦初期に活躍していた零式戦闘機零戦だ。

 零戦がすぐに引き返して、この事をすぐにレコンに伝えた。

「試験中の零戦から敵ワイバーンナイト集団の発見と迎撃報告です」

 レコンがロアの書斎に息切れしながら入って来た時、ロアは寝具に横になっていた。

「どこだ?」

「はっ。帝国西のドウォーリア海です」

「・・・レコン。係留中の記念艦であるアイオワ級戦艦の3番艦ミズーリ《BB-63》は準備できるか?」

「機関は問題ないですが、主砲弾が・・・」

「出港できるのかを聞いているのだが?」

「か、可能です!」

 ロアはすぐにベッドから立ち上がり、窓に目を向けた。

「はぁ・・・もう、建国して5ヶ月か。早いな――1月に建国したから6月だけど、旧海軍艦艇が減る中、記念艦だけは残り続けている」

「ろ、ロア様?」

「すぐに発令して来い、すぐに向かうから」

「御意」

 レコンが部屋を出て走って行く足音が聞こえた後、書斎を出て軍港に向かった。

*******************

 ヴェルモンティア帝国東方にあるカルスティナ軍港では、急いで戻って来たレコンが乗船員たちにロアからの指示を飛ばしていた。

「――ベドガは係留錨を斬って、ボイラー室状況は?」

 機関室では元々ミズーリを動かしていた機関士たちの指示の元、スチームエンジン《蒸気機関》に火を入れている所だった。

「耳を塞いでいろよ・・・!」

 火が中に入ると計器類を操作して「ご機嫌に動いたぞ」といった。

「ボイラー《機関》室からブリッジ《艦橋》へ、ボイラー8基点火完了。いつでも、暴れられる」

 甲板に着いたロアは艦内に入り、レコンと合流した。

「ロア様」

「ああ、レコン。ボイラーは?」

「元気が有りすぎていますよ」

「弾薬類の方は?」

「問題ないですが、無駄撃ちは・・・」

「オーケイ、すぐに出港する」

「了解」

 レコンとは艦橋に通じる場所で分かれて、1番主砲塔と2番主砲塔が良く見える場所に向かった。

「機関前速」

『――全機関、前進前速!』

「進路そのまま」

『――進路変更なし!』

 ロアが無線で機関室と航海長に指示を出す中、艦首が波を切り裂くように進み始めた。

「1番砲塔、準備は良いか?」

『準備良し!』

 1番砲塔は展示のために、装填装置上に置かれていた主砲弾と装薬を装填し終えて待機していた。

 2番砲塔内では、赤錆が付いた主砲弾3発を6人で砲身内に押し込み、給弾装置によって運ばれてきた装薬を新兵が3人で一斉に押し込んだ。

『2番砲塔?』

「装薬装填、準備良し!」

 3番砲塔では、展示用に置いていた徹甲弾と榴弾を混ざりながらも装填していた。

『3番砲塔、どうだ?』

「徹甲弾と榴弾が混じっているが、支障はない!」

『ロックンロール・タイムの時間まで待機しろ』

 1番主砲塔と2番主砲塔が良く見える場所に居たロアは、白波を立てながら航行するミズーリに感嘆していた。

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