エピソード31 ヴェルモンティア帝国へ

 午後10時、旧ローレリウス帝国港湾都市アリッサ沖5キロメートル。

「前方、帝国旗を視認!現在地は旧ローレリウス帝国港湾都市アリッサ沖5キロメートルです、ちなみに艦影は視認していません」

「そうか。全艦、入港準備!」

 重巡摩耶から順番に港湾都市の港に停泊して行き、最後の潜水伊15までが入港し終えるとここまで一緒だった護衛艦隊5隻が一斉回頭して第二移動艦隊を迎えに行った。

「総員、敬礼!」

 護衛艦隊と共に来た第二移動艦隊と輸送艦隊から出て来た人員が、レコンとベルフィティアの号令と共に旧ヴェルモンティア領旗と海軍旗を掲揚した。

「諸君、ここが旧ローレリウス帝国領土であり今からヴェルモンティア帝国領土となる場所だ。そして、見たまえ。この壮観なる光景を!これこそが旧ローレリウス帝国に召喚された異世界人が残したアイオワ級戦艦6隻と残された戦艦や巡洋艦群、駆逐艦群だ」

 確かに軍港として使われていた埠頭には、第二次世界大戦時に使われていた米軍艦が錨を降ろして記念艦のように静かに停泊していた。

「嗚呼、なんと壮観でありなんと感服する事だろうか・・・!」

 ロアが涙を一筋流して感動していると、G―3の銃口を空に向けたベルフィティアが「お兄様、そろそろ城内に行かないと・・・」と言ってジト目を向けた。

「あ、ああ・・・。分かった、コホン!――総員、移動開始。レコン、護衛艦隊と共に対空および対水上警戒を厳としろ」

「ハッ!」

 そして、旧帝都ローレングまたの名を新帝都ローヴェルに移動し終えたのは翌朝の午前03時だった。

*******************

 午前11時まで仮眠をしたロアは立派な軍服を纏い、読目しながら挨拶文句が書かれたメモ紙を見ていた。

「失礼します、お兄様。講演式の準備が完了しました」

「ああ、分かった。あー、もうちょっとだけ短くできないかなぁ?」

「お兄様は今からここ、ヴェルモンティア帝国の皇帝ですよ?短い文章だと、一部の反感を持つ臣民や貴族に舐められますよ?」

「うっ・・・、わかったよ。はぁ~・・・もう、最悪オリジナルも混ぜるかぁ」

 ベルフィティアの後ろから演説台に姿を現したロアをベルフィティアが敬礼するとそれに倣って、護衛や元帝国騎士達が敬礼をした。

「これより、ヴェルモンティア帝国の皇帝であるロア・ヴェルモンティアの演説と訓示を始める!臣民は――ッ」

「待って、待って。いきなり、臣民と呼んでしまったら旧ローレリウス帝国に仕えていた国民達が混乱するだろ?だから、敬わなくていいよ」

「は、はぁ・・・って、それだと――」

「舐められる・・・か」

「は、はい」

「大丈夫、反乱を起こした暁には死刑では無く奴隷でもない方法で罪を償わせるから」

 その言葉が広場に居た民衆には死刑宣告のように聞こえた。

 実際にそう聞こえるように、魔力と覇気を込めた声色で脅していたのである。

「――ッ、ゾゾッ!」

「あー、で・・・なんだっけ?――・・・ああ、そうだった。旧ローレリウス帝国の国民の皆様、私は元コルトリア王国のヴェルモンティア領主のロア・ヴェルモンティアです。先日の皇帝との戦争によりここ、ローレリウス帝国は今よりヴェルモンティア帝国になります」

 国民達や貴族たちはざわついていたが、ロアはさらに続けた。

「私の優秀な部下と執事、義妹がこの国を護ります。そう、ヴェルモンティア帝国軍が陸と海、空の安全を確約します!」

 それから2時間後、講演式を終える頃には陽が西に下っていた。

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