エピソード29 遭遇

 午前11時50分、ローレリウス帝国城壁上空。

 OH―1が旋回しながら偵察していると機内に取り付けられていた無線機からトンツーが聞こえて来た。

「城壁に対空兵器は、今の所確認せず。ん?モールスが・・・?」

 音量を僅かに上げて聞き耳を立てていると〈---- ・・-・ ・・・ ・-・- --・-- ・-・-・- --・-・ ・・ -- ・・- ・-・ ・- ・--- -・・ ・・- ---- ・・・- ・---・ --〉と聞こえて来たので素早く書類本を開き意味を確認した。

此方コチラロア、城内ヲ報告セヨ・・・か。えーっと――イジョウナシっと」

 急いで書類本を開きながら、返信を打電し始める事にした。

〈・- --・-・ ・・ -- ・・- ・-・ --・-・〉

 返信を打電し終えてもその場に残り続けて、観測していた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 市街地用迷彩服を着たロア率いる第一小隊は市街地の屋根伝いに移動をしていた時に、ロアは城壁を観測しているOH―1に打電した。

〈---- ・・-・ ・・・ ・-・- --・-- ・-・-・- --・-・ ・・ -- ・・- ・-・ ・- ・--- -・・ ・・- ---- ・・・- ・---・ --〉

 ロアがてのひらサイズの電鍵を爆速で押している姿を見た小隊員は、唖然としていた。絶え間なくトンツーという音が聞こえてくるのだから、仕方が無い。

 打電をして暫くすると、短く〈・- --・-・ ・・ -- ・・- ・-・ --・-・〉を繰り返して返信が来た。

「イジョウナシ・・・か。小隊を分隊規模にする、第一分隊と第二分隊は照明弾を発射して沖合で待機させているロア級ミサイル駆逐艦2隻と戦艦群に砲撃要請をしろ。第三分隊はスプーキーに城壁を指示しろ、最後に残った分隊は狙撃準備して俺の指命で撃て。各分隊、配置に着け!」

「「「「了解‼」」」」

 すぐに配置に着かせると、無線でOH―1に帰艦を指示した後で丁度着いたスプーキーに要請を出した。

「OH―1、こちらロア。帰艦しろ、ご苦労だったな」

『いえ、そんな事は無いですよ。それと、先程スプーキーが海岸直上に来たそうですよ』

「分かった」

 無線のチャンネルを切り替えて、スプーキーに繋げた。

「こちら第一小隊長のロアだ、スプーキー応答せよ」

『こちらスプーキー』

「方位56、オービック《左旋回固定》で撃ち方待て」

『ROGER』

 無線を切ると同時に、『こちら旗艦信濃、これより艦砲射撃を実行する』という無線が聞こえた。数秒後、フュウゥゥゥゥという音と共にオレンジ色や流星色の砲線が空に無数の弧を描いて見えた。

『・・・5、4、3、着弾、今――!』

 ローレリウス帝国城壁や城外に沢山の砲弾が降り注ぐ中、その光景を眺めていたロアの無線に緊急無線が入った。

 無線を取り応答すると、A分隊とB分隊だった。

『こちらA《アルファ》。勇者と名乗る二人組の女性と交戦中!支援を求める!』

『こちらB《ブラボー》、同じく勇者と名乗る巨大な斧を持っている女性と接敵している!』

 勇者だって?マジで・・・?面倒な相手だなぁ、仕方が無いよな?

「ロアだ、そっちに取り敢えずOH―1を派遣する。状況を教えてくれ」

『Aのほうは二ホンという異世界からやって来たという事をほざいており――』

 まって、「ほざいて」って言い方が・・・。

「そ、そうか」

『Bよりロア隊長へ、こちらは大日本帝国という場所からの異世界人です』

「ん?大日本帝国だって?」

『はい、セイレキというものが2008年と言っています』

 西暦2008年の大日本帝国だって?つまり、パラレルワールドか・・・。

「分かった、第一小隊の場所まで後退しろ。勇者らの相手は俺に任せろ」

『『――ッ、了解』』

 ロアはその後、居場所を知らせるために白色照明弾を撃ち上げた。

「さぁ・・・、楽しいうたげを始めようか」

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