エピソード27 形勢逆転

 空爆後の市街地はあちこちで呻き声や火災が発生していたのだが、敵兵士が見当たらなかった。逃げたのか、灰になったのかのどちらかだろう。

「レコン、無線でLCAC《エア・クッション型揚陸艇》を揚陸させろ。第一小隊の指揮は任せろ」

「了解」

 レコンが次に戻って来た時には、LCACによって揚陸されたLAV《軽装甲車両》3両や10式戦車5両、飛竜騎士対策として87式自走対空高射機関砲が支援に来た。

「LAVはそのまま第二小隊の援護に向かえ、戦車隊は自分の判断で撃ってよし」

『LAV了解』

『戦車分隊、了解』

 87式を対空装備として前線基地に移動させた後、照明弾を撃ち上げた。

「レコン、緑色照明弾を上げろ。見えるように」

 すると、上空から駆動音が聞こえて来たのでロアが見上げた。

「やっと来たのか、味方が。――これで、形勢逆転だな」

 直上にCH―47JA《チヌーク》が、ホバリングしたままあった。

 そして、中から次々と屋敷内で訓練をした女性兵士達がファストロープ降下をして降りて来るとロアの前に来た。

「・・・え、えーっと」

「ロア隊長。いえ、お兄様。訓練を終えた士官候補生もとい、新兵124名を届けに参りました」

 聞き覚えのある声が聞こえて来たので「その声色は・・・?」と言いながらその方向を見ると、HK416を装備した義妹――ベルフィティア・ヴェルモンティアの姿があった。

「ベル⁉なんで前線に来た⁈」

「お兄様が心配でしたので――」

「バカ!」

「え?」

「俺は、ヴェルモンティア領当主でもあってお前の義兄なンだぞ‼家族でもあるンだよ!心配かけているのは、ベルの方だろ⁈」

 ベルが怒られているのを間近で見ていた彼女達は、心の中で「あの鬼教官が・・・」とか「可哀そう・・・」と思っていたことをベルは知らないだろう。

「全く、はぁ~・・・それで?」

「あ、私達は増援として――」

「そうじゃない、君達はコレが初陣か?」

「は、はい!そうであります!」

「そうか。俺がロア・ヴェルモンティアだ、現当主であり君達の司令者だ」

「第四小隊長として配属されました、メルヴィス・モドリックです!」

 その後順番に名前と配属先を聞いて、指示を出して置いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ローレリウス帝国城内にある召喚の間には5人の魔術師が円形に並び、詠唱をし続けていた。そこに同席しているのはユミレ・リーディアと名乗っていた女性が居た。

「ユミレ。どうだい、我が帝国内でS級の実力者たちを集めているのだが」

「流石です、皇帝陛下」

「ワッハッハッ!そうだろう、そうだろう。それで、ワットソン・ガーベレル君が戦死した事についてだが・・・あれは君の策略かね?」

「ええ、そうで御座います。何分、彼は異世界地球西暦1942年から来たという軍人でしたので――脳筋軍人でしたよ」

「そ、そうか」

 二人が会話をしていると円形魔法陣が光り、中央に女性が倒れていた。

「――おや?成功したのか」

 その頃、帝国城外の市街地を行進していたヴェルモンティア領が誇る主力中隊180名は、周囲を警戒しながら確実に向かっていた。

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