シーズン1 ローレリウス帝国戦

エピソード24 抑制のための砲艦外交

 屋敷に戻ったロア・ヴェルモンティアは、義妹であるベルフィティアからの報告を聞いた。

「それで?一体何があった?」

「さっき、帝国側から無条件降伏をと言う使者が来たの!」

 無条件・・・つまり、ポツダム宣言という事だ。いや、この異世界で言えば国内臣民を奴隷にしても文句を言わないというぐらいの条件交渉である。

「帝国が?あの強気にまで攻めてきていた――おかしいな」

「お兄様・・・?」

「取り敢えず、その使者を応接間に呼んでくれるか?」

「わかりました」

「レコン、一時的に屋敷中を封鎖しろ。何かがおかしい」

「畏まりました」

 2人が部屋を出ていった後、ロアは机に向きなおり腕を組んで考え事をし始めた。

「使者を送るなら、もう少し早い方がいいと思うのだが・・・まぁ。向こうで事件か何かが起こらない限り遅くはならないよな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 準備が出来たと言いながら部屋に入って来たベルフィティアと共に応接間に向かうと、ロアは服装を整えてからドアノブを回した。

「お待たせしました、現当主のロア・ヴェルモンティアと申します」

「あ、いえ。私の方こそ、突然すみません」

 使者は男性と思っていたが、赤髪の女性だった。

「えーっと・・・、どういったご用件で?」

「はい、只今ヴェルモンティア領と帝国東部で発生している海戦について釈明をしに参りました」

「釈明というと?」

「私達帝国が召喚した異世界人が勝手にこちらに宣戦布告をしたという情報が3週間前に届き、急いで参った次第です」

「なるほどね・・・。ベル、レコンを呼んでこられるか?」

「行って来ます」

 その間に給仕にお茶を用意させた。

「貴女の名前を、一応聞かせてくれます?」

「はい、ユミレ・リーディアと申します」

「では、ユミレさん。まず初めに我が領内の戦力は、陸軍を7師団と海軍内の戦艦や駆逐艦などの艦艇を集めて450隻、空軍3師団、海兵隊5小隊と大規模な軍事領です。一方、こちらの優秀な偵察員からの報告によると帝国側は現在軍縮中だと聞きましたが?」

「ええ、現皇帝のロワルド・ローレリウス陛下は争いを好まないので」

「なるほど・・・ですが――、可笑しいですね。好まないはずなのに、現在西にある海岸沖には帝国の旗を付けた揚陸艦を旗艦である戦艦大和が補足しているのですが?」

 リアルタイムで、海岸を警備中の防衛海兵隊がデータリンク上で報告して来ていた。

「せ、戦艦ですか?」

「ええ、我が領内でも最大クラスの火力を誇る主力艦艇ですよ」

「これが、その証拠ですが?」

 そう言って、見ていた画面を使者の方に向けた。

「それで、どう落とし前を付けるおつもりで?」

 ベルフィティアが入ってくると同時に、静かに入って来たレコンは素早くAK―12を構えた、そう。今、目の前に居る使者は偽物だ。本物なら護衛を連れているはずなのに、この人は一人で来た。

「――ふふ、見破られていましたか」

「ああ。最初に見た時に、何となく見破ったよ。帝国のスパイだよな、あんたは」

 ロアが指を鳴らすと応接間の壁が消えて、屋敷中の警備兵やP90を構えて武装したメイド達が姿を現した。いきなり現れたかのように見えるが、実は最初からここで待機をしていた。

「なッ!」

「フッ・・・。少々、俺を甘く見過ぎたな。さぁ、大人しくしろ。貴様には拷問が待っている」

 2分後、手錠をかけられた女性はそのまま警備兵に地下牢まで連れていかれた。

「レコン、お手柄だな」

「恐悦至極です」

「畏まらなくても良いよ、たまには心の底から喜びなさい」

「・・・では――やったー!」

 笑顔でガッツポーズをしたレコンを尻目に、女性を地下牢に連れていった警備兵が戻って来たので敬礼をして応接間から自室に戻った。

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 夕方、2度目の砲艦外交の必要性があると決めた海軍司令庁がロアの元にやって来た。

「失礼します、ロア様」

 といっても、ヴェルモンティア領の兵士や警備兵はこのコルランテ王国内の元女性近衛騎士や女王様専属だったメイドが所属している。

「ああ、キミか。なにかな?」

「はっ!先の帝国の身勝手なスパイ行動を抑制する必要が要ると考えたので大和型4隻による大規模な砲艦外交を画策しました」

 そう言って書類を手渡して来たので内容を見ると、大和型4隻や軽巡洋艦を旗艦とした水雷戦隊を4艦隊用いる大規模な作戦が書かれていた。

「良い作戦だな、乗った」

 書類に採用の判子を押すと、すぐに軍港に向かった。

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