エピソード21 登場セリフを決めた

 更衣室で学院服から愛用している軍服に着替えると、演習場内に出た。そして、カラーコーンを散らばるように置くとLM002という自衛隊の偵察分隊が愛用している軍用の高機動自動二輪車バイクを取り出した。エンジンをかけて跨り、土煙を上げながら走り出すとカラーコーンの間を蛇行したりウィーリーをしたりといったアクロバティックな技を繰り出していった。最後は、バイクをスライドさせながらMP5Kを片手で撃てるように改造したMP5KA1を撃つという情人ではできない動きをした。よく特撮物やSF映画とかで見る技だ、一度で良いから素人の俺がしたかった。

「――こんな物か」

 気が済むまで乗り回したり、騎馬戦のようにキラーソードやブラッケリアを振り回したりハンドルから両手を放して的を弓矢で撃つという事もした。

 しかしそうなると、決め台詞も欲しくなるのが男だ。

 必死に考えて、納得のいくセリフが決まった。

「さぁ、パーティーを始めようか」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 時刻は、午後9時頃。

 自室に戻ったロアは、指先に小さな火種をともさせると消したり付けたりして考えていた。

「俺・・・、前世で親孝行していなかったな。今思えば、旅行ぐらい連れて行けばよかった」

 前世で生きていた頃は、高校を卒業して2ヶ月は引きこもりになっていた。原因はイジメや体育教師の体罰やパワハラなどなど。それらを無視し続けていたが、祖母の死で廃人のようになり引きこもりに陥った。引きこもりになってしばらくたったある日、クラスで仲の良かった女子が朗報とばかりに家に来たことが有る。俺や他の生徒達が引きこもりになった元凶である体育教師が教育委員会にイジメがバレ、首になったらしい。

「今頃かよ・・・」

「でも、××。あたし、あんたの味方だよ」

 そう言って笑った彼女にあの時、感謝を伝えておくべきだった。数日後、トラックに轢かれた彼女は天国に行ってしまった。俺の感謝も聞かずに、誰よりも早く。

 思い返すと涙が出そうだって、アレ・・・?何かが頬を伝っている。

 手の甲に落ちた物を見たら、涙だった。

「・・・俺は、まだヒトなのか」

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