エピソード15 4年は、早くない?
ローレラン帝国ガドリマス軍港、午前十一時五十分頃。王都コルトへ艦砲射撃任務に就いていたボルチモア級重巡洋艦の1番艦ボルチモアは埠頭に帰港していた。ボルチモアを召喚させたのは帝国側の転移人であるワットソン・ガーベレルだ。彼は2001年の9月11日にテロによって死んだ。ちなみに、彼の祖父はボルチモアに従事していたという経歴がある。
「ワットソンさん、本当に良かったのでしょうか?」
「良いンだよ、あんな帆船しかない国は良い実験場だから」
「……しかし、報復攻撃を仕掛けて――?」
「大変だぁ‼」
その時、見張り台に居た兵士が沖合を指差して叫んだ。その兵士がさしていたのは、ロアが乗った古鷹だ。
「あれは……、ファックジャップの重巡洋艦(ヘビークルーザー)じゃねぇか!」
見張り員が慌てて鐘を鳴らし始めていると突然、見張り台の兵士が爆散してその下に居た兵士達に血の雨が降り注いだ。
「ヒッ……!」
「落ち着け!対艦戦闘用意、急げ!」
その間にも古鷹から4発の砲弾が、ボルチモアの船体に降り注いできた。
「野蛮人のくせに……‼」
そう言って艦橋内に入ったワットソンは飛んできた二発の砲弾が直撃した事により、左手を失うほどの重傷を負った。
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ワットソン・ガーベレルが油断して話している頃、沖合に居た古鷹の艦橋では「敵艦、補足。距離二キロメートル!主砲射程内‼」という声が艦橋内に伝声管で入ってきていた。
「全主砲塔、準備良し」
「撃ち方、始め」
「――撃ち方、始めぇ!」
三基の主砲塔が左舷へ一斉に向くと同時に、火を噴いた。
装填されていた主砲弾種は三式榴弾だ、これは命中すると同時に命中した場所を火災にするという砲弾だ。
「命中弾、五発確認」
「次弾装填、誤差一度下方」
「誤差修正、準備良し」
「てぇー!」
今度は敵艦の艦橋付近と、第一主砲塔に命中したのが見えた。
「敵艦の第一主砲塔と艦橋付近に命中確認!」
「魚雷戦用意、偏差合わせろ」
「合点!」
「魚雷発射」
「発射!」
古鷹の側面に装備されていた六十一センチ四連装魚雷発射管二基の内の左舷側の発射管から九三式六十一センチ酸素魚雷が投射されると、航跡を引かずにボルチモアの艦尾に全魚雷が命中した。
「弾幕を張り続けろ、それとお土産も投射して行こうか」
機雷投射機から機雷を投射し終えると、反撃が来る前に撤退を始めた。
古鷹が撤退していく中、ボルチモアでは負傷した兵士やワットソンが後部艦橋に集まっていた。
「野蛮人の野郎……、総員戦闘配置!やられたままでは、ダメだ‼あの船を撃沈してやれ‼」
緊急出港したのは良いがその後、古鷹が残して行った機雷が艦首に触れて艦首を喪失したボルチモアは止む無く帰港していった。
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ローレラン帝国の主力艦だったボルチモアを大破させた船がヴェルモンティア領の船だと知られてから、4年が経過した
古鷹だけだったヴェルモンティア領軍港の埠頭には、2番艦の加古や青葉型重巡洋艦の1番艦青葉と2番艦衣笠が停泊していた。その後ろにある4つの乾ドッグには、妙高型重巡洋艦の1番艦妙高から4番艦羽黒が停泊していた。
加古は古鷹と同じ性能だが、青葉型の主武装と副武装は五十口径二十・三センチ連装砲塔三基六門と六十一センチ四連装魚雷発射管Ⅰ型二基八門だ。その他の火器管制は四十五口径十二センチ単装高角砲四基四門と二十五ミリ三連装機関銃座九基、二十五ミリ連装機関銃座六基を搭載した基準排水量八千七百トンの全長百八十五・一七メートルの重巡洋艦である。最大速力は三十三・四ノットを誇り、十四ノットで八千二百二十三浬を航行できる計算だ。更に、妙高型の主武装と副武装は五十口径二十センチ連装砲塔五基十門と六十一センチ三連装魚雷発射管四基十二門だ。その他の火器管制は四十五口径十二センチ単装高角砲六基六門を搭載した基準排水量一万千三百トンの全長百九十二・四メートル、最大幅十九・〇メートルの重巡洋艦である。最大速力は三十九・五ノットを誇り、十四ノットで七千浬を航行可能な計算だ。コレだけの快速を出すために機関出力は驚異の十三万馬力を保有している。
王立学院マナディルアに編入して4年もたてば、後輩に慕われているぐらいにもなる。なんせ、4年前の出港を見ていた国民や学院入学を夢見ていた女子生徒達からすれば、王都コルトを救った英雄を見ているかのようになるからだ。
「ロア先輩、お昼ご一緒しても良いですか?」
「あ、ロア先輩!こんにちは!」
「きゃ……!お手を振り返してくださったわ!」
モテ期というやつなのか、この状況は?
どこに向かうにしても、周りを囲まれてサインやら談笑などをしていれば他にも入学して来ていた男子生徒から嫌な視線を感じる。
「お兄様、鼻を伸ばしていてはいけませんわよ?」
相変わらずベルフィティアは冷たいが、4年前以降さらにブラコン度が増した気がする。そう言えば、ベルフィティアは他の男子生徒達から冷酷の姫と呼ばれていたはずだ。
「どっちもどっちだ、ベル」
「そ、そんな事はありません!」
「本当か?」
「はい!」
「あ、背後に虫が……」
「――いやぁ、取ってぇ……!」
「冗談だよ、ベル……って、――ぐh!」
ベルフィティアから見事な怒りの
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