エピソード10 7属性と96式装輪装甲車両

「はい、しずかに~」

 王立学院マナディルアのあるクラスの見学に来ています、ども。ロア・ヴェルモンティアです。

 教員がロアとベルフィティアを連れて教室内に入り、一クラスの人数と授業内容などを説明していった。

「ロア・ヴェルモンティアとベルフィティア、改めて自己紹介をしろ」

「あ、はい。ロア・ヴェルモンティアです、以後お見知り置きを。そして、隣が妹の――」

「ベルフィティア・ヴェルモンティアですわ」

 二人が貴族らしい挨拶をすると何故か、静かだったのだが拍手が沸いた。そこから、指定された席に着くとクラスの皆から質問攻めに合った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ねえねえ、ロア君って。魔法属性、いくつあるの?」

「成人の儀式に魔法極を授かったって、本当?」

「あの暴君で有名だったクロラージ様を、従えたって本当なの⁉」

 それらの質問に対して対応していると、ローズが来た。なんでも、理事長から学院内の案内を任されたらしい。

「――それで、ここが食堂です!ここのパンが美味しくて……」

 涎が一筋ローズの頬を流れるのを見ていると突然、鐘の音が短調的に鳴り響いた。

「この鐘の音は、一体?」

「実習に出ていた5年生に何かあったという事です!すぐに、行かないと!」

 実習という物があるのか……なるほど、嫌な予感がする。例えばだが、実習先で強姦を求められたが断り、その際に実習先の軍関係者などと臨戦状態に陥るなどとか……。

 すると理事長自ら、ロアに救援を求めて来た。話を聞くと、予感が当たった。

 思った事が、現実になっているし!

「分かりました、すぐに向かいますよ。場所は何処で?」

「私が案内します、理事長」

 蒼髪の女性が息を切らしていた、最初に一目見て思ったのは美人だ。

 しかし、腰には鞘が有り恐らくだが剣か何かなのだろう。

「あ、マークス先輩よ!」

 食堂に居た女子学院生たちが黄色い声を上げた。

 マークス・フラットリア。レコンに調べさせたところ、フラットリア領のご令嬢だが男装を好むためいつも男子に見間違えられるらしい。おまけに、正義感が強い。

「貴方が、ロア君ね。よろしく、マークス・フラットリアです」

「ご丁寧にどうも、ロア・ヴェルモンティア……です」

 ふつうは客人から挨拶をするのだが、緊急事態な事もありマークスが先に挨拶をしてきた。

「それで、理事長から色々聞いていますが。一つだけ質問良いかしら?ロア君、貴方の属性は?」

 この質問に食堂内が、ロアに釘付けになった。

「なぜ、聞く必要が?」

「私は魔剣士だから」

「ちなみに、魔法の属性って何種類ありましたっけ?」

「火・水・風・光・闇・聖・無の全部で7つだが?」

「7つもあるのか……」

 覚悟を決めてロアは、全属性が使える事と異世界からの転生者でもある事などをこの時初めて告げた。そして、今まで魔物との戦闘時に使っていた専用の剣や刀、銃火器などを机の上に並べてその場の誰もが理解しやすいように説明をすると何とか理解してもらえた。

「――つ、つまり……、今まではこのショウジュウと呼ばれる物で対処していたという事なの?」

「ええ、そうですね」

「信じられないわ……」

 まぁ、そうだよな。異世界転生系のラノベって、チートアリの設定だから初読者とか魔法が日常の世界から見れば異次元かつ反則だよな……。

 苦笑いをしていたが、本来の目的を思い出したロアはマークスさんとその場所へ向かう事になったのだが「では、馬車で移動する」と言われた時に反応してしまった。

「馬車だと、どれくらいかかるのですか?」

「そうですね……ノースカリア領までは半日かかりますね。ま、まさか……?」

「俺だと50分ぐらいで着きますね、じゃあ。行きますか」

 そう言うとマークスさんやローズさん達を正門まで移動させると正門に一台の車両を出して、説明しだした。

「これが、96式装輪装甲車両です」

 96式装輪装甲車両――前世で使われていた元自衛隊の車両だ。武装はブローニングM2一丁だけだが、貧弱な武装を補う様に装甲と速度が優れている。

 ここ王立学院マナディルアがある王都コルトからノースカリア領まではどんなに早い馬車でも、最低3日は掛かる。その為に出したが、これなら早くて2時間だろうな。

 だって、法定速度なんて異世界には無いでしょ?

「さ、どうぞ。乗ってくださいよ」

「あ、有難う」

 マークスさんの手を取り後部ハッチを開けてから乗せた後、ハッチを閉めて運転席側のハッチを開けて乗り込みエンジンをかけた。

 そして、ハンドブレーキを下げてギアをPからDにチェンジすると、後ろに繋がる格子をあけて「行きますよ」と声を掛けた。

「あ、はい」

 車内を見て驚いていたマークスさんが声をあげると同時に、アクセルペダルを吹かし気味にして動き出した。

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