プロローグ 兄妹漫才って、和むンですね

 2085年9月。東京都M区に住んでいたのが俺だ、無職でないよ。ゲーム会社のエンジニアだった。普段は在宅ワークだが、クライアントからの依頼があれば海外だろうが出張する。それが日常だ。

 でも、まさか……25歳で事故死って、ありえないよな?でも、人生何が有るか、神さえも分からない。それが普通だろ?

 今、思い出しても当時。まさか、異世界でヲタクをしていて良かったと思う事はこの先無いと思うね。え?

 だって、第二人生の方がめちゃくちゃ楽しいから。

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 異世界に生まれて16年が経過したけれど、大学以上の設備が整っている王立学院マナディルアに体験入学としてきたのは初めてだ。しかも、理事長の話ではこの学院は男子生徒ゼロの女子専門の学院らしい。なんでも、魔法適正が圧倒的なほどまでに高い女子が軍や国家規模に這い上がるための育成機関だとか。

「次に、理事長からの提案で共学化を進める方針故に体験入学という形でヴェルモンティア領当主のロア・ヴェルモンティアとベルフィティア・ヴェルモンティアが来ています。彼の事を知ってもらうために、まずは自己紹介をお願いしたいと思います」

 現在進行形で全学年が年に1回集まる集会みたいな場所に、ロアとベルフィティアが居た。

「――では、どうぞ。壇上へ」

 黄色い声や拍手で迎えられたので壇上に姿を現すと、こちらに手を振る一人の少女が右目の端で見えた。

「えー……、ヴェルモンティア領当主のロア・ヴェルモンティアと妹のベルフィティアです。得意魔法は多すぎて選べませんが、まぁ。何とかなると思います、じゃあ。ベル、ご挨拶をしようか」

「はい、お兄様。コホン、お兄様は私だけの存在なので――キャン!」

「ばかやろぅ、皆引いているから。あ、ははは……!こう見えて、根は優しくて気が利くので気にしないでください」

 兄妹漫才のような一面を見せた事で、冷たかった空気が和んだように思えた。

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