エピソード09 強すぎて楽しくねえぇ!

 たまには魔法を使わないといけない……よな?

「地獄の業火ヘルファイアウォールを組み合わせた魔法は地獄の壁ヘル・オブ・ウォールを作れるのでは?」

 思いついたらすぐに実行するのが前世からの癖だ。

 庭に出て近くにある岩を包むようにヘルファイアを展開させると同時に、ウォールを展開してそれを閉じ込めた。そして3分ほど待って、効果を確認する。

 って!カップ麺かぁい‼

 気を取り直して次に思いついたのは、火焔ファイアを拳に宿した火焔拳だ。しかも対象に命中すると凄まじい熱風と熱線を発生させる。クレイジーな拳業だ。

「あの岩で試してみるか。……ふんっ!」

 すると岩にひびが入ってパンチした場所から放射状に亀裂して崩壊した。

「あ……、やべ。やっちまった……」

 貫通した場所が赤く焼けて岩に直径10メートル程の円が出来た。

「……ワンパンしそうだな、コレ」

 某ヒーロー物の展開になりそうな予感がしたが、既存の魔法では面白くなかったのでその後も合成魔法を造り続けた。

 結果、合成魔法が15と特殊魔法近接攻撃が5という感じで造れた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 後日、早速試用できる事案が発生した。

「失礼します、ロア様!」

 いつものように自室で本を見ているとレコンがノックを忘れて入って来た。緊急事態のようだ。

「うぉ⁉ど、どうしたの⁉」

「はぁ……はぁ……ッ、先程。西の森にて、超大群の魔物と2匹の体長凡そ5メートルのブラック・ベアが発見されました‼」

 ブラック・ベア――確か、S級の冒険者10人で1匹を討伐可能なほどのタフな魔物だよな?それが2匹も?嘘だろ?

「西の森だよな?」

「はい」

「レコン。報告、ご苦労様。さぁてと……俺の右手が、火を噴くぜ」

 キラーソードを片手に窓から飛び出して、右手には最近魔術液体で開発した6発しか撃てないのが困るが六・五八ミリ弾を使用するOUTLAW《アウトロー》を装備した。

「それじゃあ、派手に行って来ますか」

 手始めにOUTLAWを構えて無意識ソナーで探していると手前の木々が横に倒れたのが見えた。

「あ、居た。これは……、大物だな。狩りがいがある!」

 容赦なく一発だけを眉間に撃ち込んだが、手ごたえが無い。

「あれ?……あちゃ~、回復スキル持ちか。敵わんわ」

 第二次攻撃方法として、キラーソードを鞘から引き抜いて突撃の姿勢で構えた。

「……瞬殺閃光――ロア流三枚下ろし‼」

 突貫していった後で敵の両肩を削ぎ落す攻撃なのだが、効果なし。むしろ、逆鱗にしてしまった。

「これならどうだ?瞬殺轟雷――ロア流桜花‼」

 大きく跳躍した後で敵の頭部に刺突し、離れてから心臓部分を刺突するという相打ちをする博打な攻撃剣術も効果が見られなかった。

 あ、なるほど。察したわ。

 すぐに右手を握って拳を作るとファイアでそれを包み込み、「火焔拳を、喰らいやがれ‼」といいながらブラック・ベアの頬にパンチをするとその勢いで地響きを立てながら倒れた。

「お?これは……もしかして……?」

 再び立ち上がったブラック・ベアの頬を確認すると再生している途中だったので、もう一発と叫びながら再びパンチすると良い肉の香りを漂わせながら起き上がらずに倒れた。

「ダメ押しの、一発‼」

 ――グワアァぁぁぁ‼‼

 なるほど、そういう事か。

「じゃあ、こっちもそれっ!」

 しかし、躱された。

「ありゃ?学習能力はあるのか、一応は」

 という訳で、猛毒のポイズン・オブ・ウォールでもう一体のブラック・ベアを徐々に苦しめるように展開させた後で他の魔物を掃除していった。

「ほらほら、どうした?狩られる側になって、怖気づいているのか?魔物だろ犬か?俺を狩ってみろよ!」

 挑発すると勢いが強まったが、5分後には一掃されてしまった。

「あーぁ、楽しくないなぁ」

 ポイズン・オブ・ウォールで捕まえて痛め続けていたブラック・ベアの方を見ると、横に倒れて動かなくなっていた。

「早くない?ねぇ」

 ポイズン・オブ・ウォールを解除してみても動かない。

 演技では無いのか、コレは。

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