エピソード06 G36―MSRとP90そして、厄介な予感

 とりあえずその後の対応がダルそうな予感がしたから全力で家まで帰ってきたのだが、ベルフィティアが部屋に入ってきて抱き着いて来た。

「お兄様ぁ、今日もお疲れ様でしたぁ」

 最近じゃ、ずっとこんな感じで部屋に入って来る。従妹であっても近親相姦という事はしないぞ・・・――分からないが多分。

「ど、どうした?」

 一瞬気を抜いていたので、不意打ちをくらった。

「今日の儀式で魔法極を授かったと、レコンから聞いたので――」

「うっ・・・、見ていたのか。はぁ・・・」

 優しく引き寄せて頭を軽く撫でていると、レコンさんが戸をノックしてきた。

「失礼します、ロア様。御客人ごきゃくじんが参られております」

 15歳になった時にベルフィティアの執事しつじだったレコンさんがロア専属の執事となったので、今までのような関係では無く最高の執事として仕えてくれている。それに、レコンさんには暗殺そうじにたけたプロ集団という者達がいるらしい。

「まさか・・・、依頼人ですか?」

「いえ、教会の神官と巫女ですが・・・?」

「――居留守を使ってくれ、会いたくない」

「ですが・・・」

「命令だ」

「――畏まりました」

 その後、馬車の音が外から聞こえてくるまで部屋の中に居たのだが一向に音がしない。

 食い下がっているらしい、面倒だ。

 結局、神官たちが帰ったのが深夜になった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 翌日。

 早朝に目が覚めたロアは、成人式前に魔術液体という大樽を買っていたので魔力を流して開発と研究をしていたG36をマークスマンライフルのような形や機構きこうに改造したG36―MSRを立射スタンディングで構えていた。スコープを覗き込み、12発の五・五六ミリマガジンを装填して狙いを窓から辛うじて見えている大岩に定めた。

「・・・ふぅ、スーぅ。・・・――ッ‼」

 サプレッサー《消音器》も何もついていない銃で撃つのだから当然音が発生する。予想通り、一番に来たのは母だった。その次がレコンさん、ベルフィティア、ルカとリリカだった。

 部屋に入って来た皆は床に落ちている空薬莢やっきょうを見て、察したらしい。

「何事なの⁉――って、あら?」

「ロア様⁉」

「お兄様?」

「ロア!」

「ロア・・・?」

 一筋の汗を掻きながら全弾を撃ち切った俺は窓から視線を外すと、空薬莢を手に取りまじまじと見ていた5人に一瞬固まった。

「ふぅ・・・、は?」

 それに気が付いた皆は何事もなかったような感じで、レコンさん以外部屋を出て行った。

「レコンさん、見た?」

「いえ。私は何も見ていません」

「本当に?」

「うっ・・・」

「ん~?」

「・・・見てしまいました、申し訳ありません」

 まぁ、見られても問題ないから咎めないでおくか。

「まぁ、真実を言ったから今回は見逃しておくよ。あぁ・・・それと、コレを暗殺部隊に寄付しよう」

 机の引き出しを開けて12人分のP90と、丁寧ていねいに畳まれた暗殺特殊部隊装衣を取り出した。

「P90は九ミリ弾を使用するが、殺傷能力は頭と心臓以外なら皆無かいむだ。安心してくれ。撃ち方は後日説明するが、この服は空気抵抗を軽減させるために着ておけ。じゃないと、降下任務の時に失敗の確立が上昇するから」

「ハッ、承知しました」

 一応、レコン直属の暗殺部隊はロアの管轄でもあるためいつでも配置に就かせることが可能であるのだが、最近は汚職やら賭博とばくによる依頼が多い気がする。

 捕捉だが、暗殺部隊員達の普段はメイドや世話係と幅が広い。

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 ある日、いつものように自室でくつろいでいるとレコンがノックとともにやって来た。

「失礼します、あっ・・・。ご休憩の邪魔をしてすみません」

「いや、気にしないよ。それよりも・・・なるほど、かくまい案件か」

 レコンの掌に血が付いているのを見たロアは、すぐに暗殺部隊員についているイヤホン型小型無線機で指示を飛ばした。

「暗殺部隊員に告ぐ、戦闘配置をげんとなせ。匿い要請だ、敵の情報が入り次第に内容を教える」

『――了解致しました、待機します』

 レコンが部屋の外に居た貴族の格好をした女性とその取り巻きだろうか、血だらけの冒険者達が部屋に入って来た。

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