第16話 意気投合
「・・・で、アンタ達はどうして付いて来てるの?」
新田さんは振り返って尋ねてくるが俺と芦戸さんはサッと同時に視線を逸らす。これはいつぞやの新田さん達が俺にやっていたことだった。
「・・・何を考えてるのか分からないけど安心しなさいよ。今日は大人しくしてるから」
顔だけをこちらに向けて言う新田さんの顔には“これ以上関わって来るのなら容赦しない”と書かれていた。
・・・うん、俺だって本当は関わりたくないよ。だけどさ…。
俺はちらりと横を歩く芦戸さんを見た。
「新田さん、お腹空きませんか?今日はなんだか冷えますね〜、わぁ!新田さんの指綺麗です!」
芦戸さんは新田さんの脅しとも言える睨みをもろともせずに話し掛けていた。肝が据わりすぎてるだろ。新田さんも眉間に皺を寄せてるものの、適当にあしらう事が出来ない様だった。
新田さんの困った様な視線とぶつかるが俺は首を横に振ることしか出来なかった。
悪い…。新田さんの気持ちも考えてやりたいが俺は好きな
「流石は新田さん!料理も得意だなんて出来る女性は違いますね!」
「まぁね。良かったら今度芦戸ちゃんにも教えてあげよっか?」
「本当ですか!ふふっ、凄く楽しみです」
意気、投合してるだと?
俺が一人で考え事してる間に二人は隣合わせで趣味の話をしていた。芦戸さんは言わずもがな、新田さんは心なしか表情は穏やかだった。しかもいつから新田さんは芦戸さんの敬称が“ちゃん”になったんだよ!俺だっていつかは、きょきょ、京香ちゃんって言いたいよ!
そんな日が到底来るとは思えないが…。
勝手に想像して落ち込む俺のところに芦戸さんが駆け足で近付いてくる。
「成海君!これから新田さんと近くのホテルに泊まるんですけど成海君も行きませんか?」
なんと、二人は短時間の間にそこまで親睦を深めたらしい。これ、俺が居る意味あんの?このまま芦戸さんに任せてしまった方が全て丸く収まるんじゃないか?
このまま帰ってしまおうかと考えてる俺の服の袖を芦戸さんが引っ張った。そんなに力があったわけではないが、芦戸さんの方へとぐらついた俺の耳元に芦戸さんの唇が寄せられた。
「成海君・・・」
芦戸さんの唇がゆっくりと動く。その度に耳に息が吹き掛かり俺は身じろぎした。頬が紅潮するのを感じながら息を呑み込んで芦戸さんの次に来る言葉を待っていると…。
「後一押しです」
「・・・は?」
「新田さんが心を完全に開くには成海君の力は必要不可欠です」
俺が想像してた事てと全く違う事を真面目に言う芦戸さんに俺は開いた口が塞がらなかった。そんな俺を見て何を思ったのか芦戸さんは眉を八の字にして首を傾げると聞いてきた。
「・・・成海君は、新田さんが心配じゃないんですか?」
いや、心配だけどそういう事じゃないんだよ。
・・・仕方ない。これも惚れた弱みって奴だ。
俺は芦戸さんに頷いてみせると三人で近くのホテルに泊まる事にした。
俺の運命の赤い糸に繋がっていたのは学校で愛されてる美少女三人組だった 白夜黒兎 @yuka822
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