第15話 いつだって勇気付けられる

「ふざけんなよっ、てめぇ!」


「何をやってるんですか!?」


男が新田さんを殴ろうとした時真っ先に芦戸さんは自身の危険を顧みず飛び出していった。それに続く様に俺も前に出る。


「誰だよ、てめぇらは」

「っ、アンタ達・・・」


男は首から腕あたりいっぱいの刺青、耳には幾つものピアス…。見るからにヤバそうな見た目をしていた。俺は危険を察知し、芦戸さんの腕を引くのだが芦戸さんは俺の腕を振り解いて前に出る。


「彼女のクラスメイトです。彼女に一体、何をしてるんですか?それに貴方は誰なんです?」

「俺はコイツの――――――――父親だ」


その言葉に驚いて俺は新田さんを見るが新田さんは気まずそうに視線を逸らす。父親なら新田さんがあんなことをしてるのを知ってるのだろうか。しかしその後の新田さんのお父さんの言葉は耳を疑うものだった。


「コイツは俺の道具なんだからどう扱おうが勝手だろ?今日だって男の相手をさせてたのに途中で帰って来やがって」

「じゃあ、この人が原因なのか…」


俺の呟きを拾った芦戸さんが不思議そうな表情で覗き込んでくる。芦戸さんは知らないから当然だろうが頭の良い芦戸さんはそれだけで何が行われてたか分かるだろう。俺が拳を握り締めてると新田さんのお父さんは頭をガシガシと掻いて新田さんを睨み付けた。


「お前は今日、野宿だ」


そう一喝して新田さんのお父さんは帰っていく。しかしお父さんが居なくなっても尚、新田さんはしゃがみ込んで地と睨めっこしていた。


「大丈夫ですか?新田さん」

「・・・えぇ」


芦戸さんが新田さんに手を差し出すとその手をとって新田さんは立ち上がった。そして俺達を交互に見て口を開く。


「みっともないところ見せたわね」

「・・・新田さん、もしかしなくてもお父さんに無理やりやらされてたのか?」


新田さんはその質問に答えなかったが無言は肯定と見て良い筈だ。


「だから知られたくなかったのに。あの人の言いなりになってるなんてほんとダッサ…。デートの邪魔して悪かったわね」

「・・・今日泊まるところあんのかよ」

「ん〜、そうね。まぁ、宛はないけど何とかなるんじゃない?」


そう自嘲気味に笑って去って行く新田さんの後ろ姿を黙って見つめていると肩を突かれ振り返る。


「成海君、彼女をこのままにしとくのは駄目だと思います」

「・・・分かってるよ。でもどうして良いか分からないんだ。新田さんはあまり関わって欲しくなさそうだし」

「当たって砕けろです!・・・なんて、成海君ばかりに押し付けては駄目ですよね。私も何か出来ることがあるなら手伝います。ですから成海君も諦めないで新田さんを救ってあげてください」


芦戸さんはぎゅっと俺の手を両手で握りしめて微笑む。


「・・・あぁ、分かったよ」


そんな芦戸さんに俺も笑うと力強く頷いてみせた。


♢♢♢♢♢♢

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