第14話 久々の再会

今日はバイトもなく、少し寄り道でもしようかと思っていると後ろから声を掛けられる。


「・・・成海君」


俺は振り返ってその人物を視界に捉えると開いた口が塞がらずに固まってしまう。


「久し振りですね、成海君」

「・・・・・あ、しど…さん?」


なんとそこには眼鏡を外して髪も下ろした芦戸さんが居た。


「どうして、芦戸さんが此処に!?」


俺は芦戸さんの元に駆け寄って声を掛けた。


芦戸さんがこんなとこに居るなんてありえない。だって芦戸さんは婚約する事になって学校を辞めたのだ。何やら相手の男性はどこかの御曹司らしく自分の土地を何個も持っているらしい。その中に学校も含まれてて、芦戸さんはそこに移動になったのだ。


「なんとなく此処に来れば成海君に会えそうだなと思ったので」


首をコテッと傾げて切なげに微笑む芦戸さんに俺は息を呑み込む。


「・・・ふふっ、冗談です」


小悪魔的に微笑む芦戸さんに久々に胸がギュッと締め付けられる気持ちに駆られてしまう。


「芦戸さん、俺っ!」

「成海君、久々なので少し話しませんか?」

「え、あぁ、うん」


芦戸さんは俺にその先を言わせない様にか俺の言葉を遮って二人で話すことを提案してくる。俺も芦戸さんとは久々に話したかったからすぐに頷いて俺達二人は近くの公園のベンチに座る。しかし座ったは良いものの、何を話して良いのか分からず俺達の間には暫しの沈黙が流れてしまう。


「芦戸さん、今の彼とはどんな感じ?」


テンパって聞きたくもない事を聞いてしまう。芦戸さんは目を見開いて少しの沈黙後、俯きがちに口を開いた。


「そう、ですね・・・。とても良い方ですよ?凄く大人で、とても温かみに溢れた方です」


芦戸さんの話し方で本当にその人が芦戸さんを大事にしてくれてるのが分かる。だからこそ悔しかった。俺の方が絶対に芦戸さんを好きな筈なのに、赤い糸に全て奪われてしまったことが。胸を押さえる俺に芦戸さんはふわりと笑う。


「成海君はあの三人とどうなりました?」

「・・・どうもなってないよ。あの三人とはクラスメイトのままだよ」

「そうですか」


芦戸さんは少し考える素振りをした後、何か思い詰めた素振りで俺をジッと見つめてくる。


「成海君、あのっ!」


芦戸さんが口を開き掛けたその時だった。少し遠くで怒声が聞こえたのは。


芦戸さんと二人でその声がする方へ行ってみるとそこに居たのは・・・。


「新田、さん?」



そこには頬を押さえて地べたに座り込んでる新田さんとそんな彼女を物凄い形相で睨み付けている男性が居た。



♢♢♢♢♢♢

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