第11話 彼女は既に大人の階段を登っていた
何故か俺と新田さんは周辺の公園のベンチに二人で腰掛けてるのだが新田さんは先程からスマホを弄っているし俺は新田さんと二人で今まで喋ったことがないからすぐに会話が持たなくなってしまった。さっきまで一緒に居た新田さんのお父さんは新田さんに何か言うと帰ってしまったしその時新田さんは本当に申し訳なさそうに頭を下げていた。こんな事言ったら失礼だろうけどその姿はちっとも仲が良さそうには見えなかった。
「新田さんが珍しく一人で帰ったから何事かと思ったよ。なんだ、お父さんと買い物に来てただけだったんだな」
新田さんは俺の言葉に一瞬目を見開いたかと思えばすぐに視線を逸らす。その表情は少し不機嫌そうだ。
「——————じゃない」
「・・・え?」
新田さんはぼそぼそと呟いた。しかし、俺には何を言ってるのか良く分からなくて。もう一度聞き返そうとした時、新田さんは辛そうな表情を浮かべたまま勢いよく立ち上がった。
「・・・あの人は、お父さんじゃないわ」
あんな密着して腕を組んでおいてどこがお父さんじゃないのか。最初は照れ隠しで言ってるんだと思ったがどうやら違う様だった。
「あの人は見ず知らずの赤の他人よ・・・今日限りの関係、もう会うことはないわ」
その言葉に俺は何も言えなくなってしまった。赤の他人…?今日限りの…?その言い方に違和感を覚えた俺はつい新田さんに対して失礼な事を考えてしまう。こんな事を思っては駄目なのにどう考えてもあれに結び付いてしまうのだ。
もしかしたら、新田さんは・・・・・。
「ここまで言えば頭の良いアンタは察しが付くでしょ?」
「・・・つかぬことをお聞きしますが、あの人とはもう」
「手を繋いだだけよ。・・・誰かさんが来なければ最後までヤッてたかもね」
誰かを強調して新田さんは俺を睨む。しかし表情に比べて声に怒りを感じないのは気のせいだろうか。
「あーあ、アンタのせいで暇になっちゃったな・・・責任取ってくれるわよね?」
新田さんは後ろ手に組みながら俺にゆっくり近付き言ってくる。今日俺は、家に帰れそうにない。何故なら俺は今から辱めを受けるのだから。
「とりあえず、何処か休めるところに行こっか」
「はい・・・。煮るなり焼くなり好きにしてください」
ぐるりと顔だけをこちらに向けながら新田さんは言う。
あれ、おかしいな。
笑ってるのに圧が凄い。
どの道もう逃げることは不可能だろう。始まりは神楽さんの一言だけど此処まで追い掛けてきたのは紛れもない俺なんだから。
俺は新田さんに身も心も捧げる覚悟を決めて黙って歩き出す新田さんの後ろを付いて行った。
♢♢♢♢♢♢
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