第42話ルーン武器

出迎えてくれた時印象的に思ったのは気さくなおじさんという感じだ。


ニナは俺より先に族長と話をつける。と言っていた。


「うむ。話は着いたが」


「まったくこれだからドワーフは・・・妙に閉鎖的よね」


話が付いたらしく、ニナの次にオルグは俺たちに話かけてきた。


「若造、飲め」


「あ、ああ・・」


これはニナが持ってきた酒か。


「わっ!わかった!」」


「お、おい。まて・・・!」


スラ子は果樹酒のリンゴの匂いにひかれて一気に飲んだ。


この手の酒は大体アルコールが強い。


・・・・大丈夫だろうか。


「・・・!」


ばたんとスラ子はその場で倒れる。まあ、そうなるよな。


「珍しいエルフ産のワインよ。リンゴを使っているの」


オルグが驚いた様子でニナに答える。


「ほお。おぬしにしては気が利くの、貰っておこう」














酒宴、と言う感じの雰囲気だった。元々ドワーフは酒が好きなのは聞いていたがここまでとは。


「お主、名前は?」


「ああ、コバヤシと言います」


「ほう・・・転移者か・・・」


突然言われ、ぎょっとするとオルグは笑う。


「珍しい話でもあるまい、過去に異邦からの勇者が魔人をたおしたという話を聞いたことがあるしな」


イシュタル・・・様もそういえば転移者は珍しくないと言っていたな。


しかし、だ。


「俺は勇者なんてとてもなれませんよ」


「ほう、なぜかの?」


皮肉っぽくコバヤシは首をふると答える。


「勇者になれるようなら、ここまでの戦いはもっと楽出来たでしょうね。買いかぶり過ぎですよ」


「あら、前に1度パーティを組んだ時は随分活躍したじゃない?」


ああ、魔獣の母体の時か。


あれはたしか・・・。


「活躍したのかはわからないが大変だったな」


さて、とコバヤシは咳払いをし本題を切り出すことにする。


・・・うまくいくかは分からないが。


「族長・・・オルグさん。今回のギルガメッシュ王の手記は目を通しましたか?」


「ふむ。それはいいがの・・・」


族長・・・オルグさんは何か条件を切り出そうとしているようだった。


カネだろうか・・・それとも手記に表記漏れがあったのか。


「酒じゃ」


「?」


ニナはため息をつき、呆れた顔で代わりに俺に対して答える。


「酒が足りないのよ。要するに」


「分かりました」


オルグさんは確認するように、俺の顔を覗き込む。


「酒樽2こじゃな。ギルガメッシュ王にそう言ってもらえるかの。その条件ならルーン武器をこちらもそれなりの品質で用意しよう」


コバヤシはオルグと契約の握手をする。思ったより難しいことにならないでよかった。


ニナのおかげだろう、あとで葡萄酒でもおごらないとな。














次はリザードマンの住む湿地帯に向かうことになる。


次で最後だ。


上手くいけば計画通り戦争に備えて連合が築かれることになる。


「つかれた」


コバヤシは馬車に乗り込むと目を閉じ、意識を手放した。


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