第43話意図せぬ騒動
______石工職人の里を出て3日ほど。
「はあ・・・運が悪い」
「それどころじゃないでしょ・・・。脱出方法はないのかしら」
俺たちは街道に待ち受けていた山賊に襲撃され、拉致されたのだ。
ニナと俺は腕を縛られ自由を奪われていた、が。
俺の背中に小さくなって隠れていたおかげでこの状況でスラ子だけが自由だった。
「・・・どうしよう!」
「まだ出て来るな。隠れてろ」
隠れたスラ子に縄をほどいて欲しかったが固く縛られていて到底ほどけそうにない。
「ねえ、コバヤシ」
「なんだ?」
ニナは何か提案があるようだ。
自信ありげに彼女は言う。
「今が何時かは分からないけど、多少の音がしても気づかないんじゃない?武器の召喚をする魔術があなたの得意な技術でしょ?」
「そうしたいんだが、後ろ手でガッチリ縛ってあってな。召喚しても手で持てないんだ。それに定期的に俺たちの見張りが来るだろ?バレたら殺されかねん」
かと言ってこのままでは拉致があかない。荷物も奪われているし、このままでは。
「任せて!」
「お、おい」
スラ子は闇に紛れ、小さくなったまま暗闇に消えた。
「わっ・・・!」
スラ子は現状の持ち物を確認する。
冒険者グッズは恐らく山賊のやつらに取られているので私の体の中に入っている杖とアダマイト魔石が2こ。
まずは、
「寝ているところを縛っちゃうとか・・・どうだろう。とりあえず人数を確認しよ!」
隠れて移動すれば感知系の魔術でもなければ見つからないはず。
・・・!
「なあ、今回の獲物・・・。あの冒険者のやつら」
「ああ、そうだな。あの女の方はハイエルフだろうな。高く売れそうだ」
二人で山賊が話している。どうやら私には完全に気づいていないみたい。
後ろからこっそりと、チャンスをうかがう。
バインド(麻痺)の魔術なら有効かも。
「わっ・・・!」
「「なっ!?」」
バインド(麻痺)は苦手だけどアダマイト魔石を使えば・・・!
山賊がこちらに気づく前に魔術を仕掛ける・・・!
「対象の自由を奪え・・・!バインド(麻痺)!」
「・・・あ・・・」
魔術の判定が成功し、二人の山賊はばたりと四肢の自由を奪われ、倒れる。
「ふふふ・・・。わたしもやればできるんだよ!」
スラ子は動けなくなった二人を静かに物陰に運ぶと片方の山賊にアダマイト魔石を使いスリプルの魔術を掛ける。
「おま・・え・・何者だ・・・」
「スライムだよ!って、そんなことを話すのが目的じゃないんだっけ!えーと、あなた達の仲間は何人いるの?」
「仲間を売ることは・・・しない・・・」
スラ子は腕を尖らせ、寝ている方の山賊の首にナイフのように突きつける。
(ちょっとしたくはないけど、しかたないよね)
「ふーん。わたしは魔物だから容赦はしないよ」
「まってくれ・・・わかった・・・」
山賊の話によると全部で5人くらいでそのうちいまは3人が寝ているらしい。・・・うん。なんとかなりそう。
まあもうこの二人はしばらくまともに動けないと思うしそのまま放っておくことにした。
「コバヤシに報告しなきゃ!」
山賊からナイフをもらってニナさんとコバヤシのもとに向かった。
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