6 高橋かれん 8月1日 17時00分

 先生は今日もアキバに向かってる。 ここのところ毎日っていうくらいだ。

 や…もちろんアタシたちの学校から一番近い駅はアキバなんだけど、先生は駅の向こう側まで毎日行くんだよね。 それもどっかのお店に入るとかじゃなくて、ある交差点までくると、そこをしばらく見渡して……で、駅の方に戻るって感じ。


 先生、どうかしちゃったのかな?

 最近はなんとなく元気ない気がするし……かれんは心配だなぁ。

 先生は頭も良くって、優しいから、多分全然心配しなくていいことも考えちゃってるんだと思うんだよね。まあ先生のそんなところもかれんは大好きなんだけどね!


 あ、言っちゃった……うん、かれんは先生のことが大好き。

 ううん、単に先生として好きってことじゃなくて、異性として大好き!

 や、もちろん先生として好きっていうのが前提にあるんだけどね。

 入学したてのころ友達が一人もいなかった、かれんのことを先生は女子サッカー部に誘ってくれた。

 おかげで友達も出来たし、今は毎日が楽しい!

 先生の担当の数学はもちろん丁寧に教えてくれるし「わからないところがあるんですけど…英語の梶田先生がちょっと苦手で……」って言ったら英語まで教えてくれた。

 あんまり愛想が良くなくって、不器用なんだけど優しい先生のことが……かれんは大好き!


 だから、今日は思い切って声をかけることにしたんだ!

 普段の学校とは違うところで見れば、先生のかれんを見る眼も変わるかもしれないよね?

 何度も頭の中でシミュレーションしてきた風に声をかけます。


「あ~っ、先生だ!」



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