3 田中幸介 8月1日 17時05分

「お帰りなさいませ、ご主人様!」


 最初に声をかけてくれたのはゆったんだった!

 一番のお気に入りの娘に最初に声を掛けてもらえるなんて……今日は良い日だね!高まるわ~!

 ちなみに彼女のことをゆったんと呼ぶのは多分ボクだけ。

 なんたって、彼女のお店での名前『あんず』。本名の『ゆか』っていう名前を教えてくれるまで、たった2週間だった。

 たぶん、ゆったんもボクのことが嫌いじゃないと思う。もちろんボクに対して恋愛感情を持っているとか……そういう訳ではないと思う。でもお馴染みの感じの良いお客さんとして認識されているはずだ。


「えっと……じゃあこの『うずまきカフェモカ』と『ふんわりオムライス』をください」


 ボクは最近よく注文するこの2品を注文した。(残念ながらオーダーを取りに来たのは、ゆったんじゃあなかった…)


 料理が運ばれて来るまでの間、ボクは店の中の様子を見ていた。

 今日は平日だけど、お客さんもそれなりに多くって、メイドさんたちはなかなか忙しそうに動き回っている。

 モノトーンの店内に、パステルカラーのエプロンをはためかせながら、メイドさんたちが動き回っている光景が美しすぎて……ボクはしばらく見とれていた。

 でもやっぱり……ゆったんが一番かわいい!名前どおりあんず色のエプロンを着けた彼女は、他の客とじゃんけんゲームをしているところだった。


(あ、そんなキモヲタ相手に笑顔ふりまかなくても良いのに!)


「ご主人様、お待たせいたしました。うずまきカフェモカとふんわりオムライスでございます」


 ちょうど料理が運ばれてきたけど、正直ゆったんが気になって、それどころじゃあなかった!


「ご主人様?ふんわりオムライスには、ケチャップで何かメッセージをお添えすることも出来るんですが、いかがなさいますか?」


 その言葉を聞いて、考える前に答えていた。


「……ゆったん」


「……はい?ゆったん、とお書きすればよろしいですか?」


「違う!ゆったん、じゃなくて……あんずさんを呼んで下さい!」


 対応してくれていたメイドさんは、一瞬よく分かっていない表情をした。(後にして思えば『みるく』さんには悪いことをしたと思う……ごめんね)


「えっと……ご主人様?あんずちゃんは今、他のご主人様と遊んでいるところなんですよ~。私じゃダメ……ですか?」


 対応してくれていたみるくさんが精一杯のぶりっ子ポーズをとったので、冷静になりかけた時、3メートル向こうのゆったんが振り返った!


「お呼びでしょうか、ご主人様?」



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