第50話 花火大会2

 出店を歩くとリンゴ飴を発見する。

 文化祭の時に買いたかったけどお客さんに全部買われて売り切れになったから食べれなかったんだよね。


「雫、リンゴ飴いる?」


 雫は、すでに色んな食べ物を両手に抱えているけど一応、リンゴ飴いるか聞く。


「食べたい!」


 食べたいみたいなのでリンゴ飴を何口かあげると美味しいに食べる。


「雫、リンゴついてるよ」


「えっ! どうしよう……。両手塞がっているのにー」


 自分も雫の食べ物を持っていて塞がっている状態なので近づいて口元についている飴を舐める。

 雫もそんな行動を取るとは思ってもみなかったから口と目を同時にギュッと瞑ってしまう。


「雫についてた飴、美味しい」


 顔を近づけた状態でお互いの吐息がかかる距離で言う。


「ちょ、ちょっと! そんなことをここで言わないで!」


 最近、恥ずかしそうにしている雫をからかうのが楽しくなっちゃっている自分がいて、好きな子にちょっかいかけたくなるのが、わかると思った瞬間だった。


 つぶつぶしたアイスとか焼きそばなどを買って満足したのか次は、ゲームばかりを三人が行きたがっていて、ついていくのが精一杯だ。


 射的で欲しい景品があったのか欲しそうな目で見ているのでお金を払ってやってみる。


 倒れやすいところを狙わないと重心がしっかりしていたら倒れにくいだろう。

 それにでかいぬいぐるみだから余計難しい。


 倒れやすいところを何発か撃って後ろにずらすようにして景品を落とすことができた。


 働いている人も、まさか落とされるとは思ってなかったみたいで口の開け方が顎が外れそうな勢いだったと思う。


 安く取れちゃったから悪いな、と思いながら雫にプレゼントした。


「いいの! これ、でかくて可愛いから欲しかったの!」


 雫の手にまた荷物が増えたので自分が持つ。


 真帆ちゃんが急に走り出して何事かと思ったら視線先には型抜きのお店があった。


「これ、やりたい!」


 型抜きとか難しそう……。

 自分もやってみたけど割れちゃって、できなかったから食べた。


 他の三人を見ると澪ちゃんがスラスラと割らずに型を抜いていて真剣にしている。

 ただの型抜きなのに、凄い集中してやっていた。


「できた」


「え! できたの!?」


 綺麗に型を抜いていて景品は食べ物だったみたいで選んで食べていた。

 真帆ちゃんが行きたいと行ったのに当の本人は、全然できなくてションボリしていて食べ物を食べながら澪ちゃんが真帆ちゃんを励ましている。

 澪ちゃんが励ましたら逆効果のような気がするんだよな……。


 次に雫が金魚すくいをしたことない、と言うので行くことになった。


「あたしの家には、金魚いっぱいいるからなー。取れたら雫ちゃんにあげるよ!」


 真帆ちゃんが、そう言って雫と二人で金魚すくいをしている。


 雫は、取ろうとしたけどあみが破れてしまって悔しいそうにしていた。

 一方その頃、真帆ちゃんの方を見ると、ひょいひょいと金魚が入っていって、まるでマジックしているみたいに軽そうに入れている。


「すご!」


 騒ぎができるぐらいの賑やかさになって雫にあげるけど育てれる数だけ袋に入れて後は、店に返したのだった。


 花火が上がる時間になったから見える場所に移動して人が少ない場所に行く。


「ここ、隠れスポットじゃない!?」


 花火も見渡せれて人も少ない。

 いつも、ぎゅうきゅうで人と肩が当たる距離感で花火を見ていたからここは、とても良い場所だ。


 花火が上がりだす。

 横一列に大きな花火が次々と上がって真っ暗な空を彩っては、儚く消えるのを繰り返していた。


「綺麗」


 そうだね、と雫が言って手を重ねながら言った。


 後日、花火大会が終わって帰った後に風の噂で、屋台を赤字にする四人組がいた、と伝説になっていた。


 射的で絶対取れないのを取ってしまう女。

 今まで誰もできたことのない型抜きを平然とできてしまう女。

 金魚が消えるほどの勢いで器に移す女。

 そして可愛すぎて店側が無償で多くの食べ物をあげたくなる魅惑キラー女。


 この四人は、ヤバイと言われるようになる。

 それは、学校が始まってからクラスの女の子が話してたみたいで、身に覚えがあるのばかりで背筋が寒くなった。


 雫に関しては、何も言えないけどな……。

 可愛いのわかるからあげたくなるって理解できたのであった。

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