第21話 伝える

 朝から色んな乗り物に乗って、気づいたら昼ご飯の時間になる。


 お腹空いたからどっかに入るか。

 遊園地の入り口で貰ったパーク内地図を見ながら言う。


「雫、どこで昼ご飯食べたい? 美味しそうなところが、いっぱいあるよ」


「見せてー。あっ、ここの料理可愛いし美味しそう」


 無意識だろうけど、雫の体が自分に密着した状態で地図に指を指しながら言っている。

 感情を無にしないとやばい……。


「雫が、ここに行きたいなら行こっか」


「うん!」


 早く食べる場所を決めて密着しなくなるようにする。

 お店に行って自分達が食べる昼ご飯は、オシャレなサラダとキャラクターの顔をついたふっくらとしたパンケーキ。


 デザートは、入りそうならまた追加で頼むようにした。


「美味しそうだね!」


「うん、そうだね」


 写真撮って、真帆ちゃんと、澪ちゃんに自慢しよー。


 料理だけの写真と、それとは別に雫と料理が写るように撮った。こっちは、待受けにしようかな。


 デザートは、一つだけ頼んでそれを二人で分けて食べることにした。


 食事を終えたら、まだ乗っていないアトラクションがあったので制覇してたら、もう日が傾き始めている。


 残っていない乗り物は、観覧車だけになった。


「雫、観覧車あるよ!」


「私、一回も乗ったことない」


 観覧車、乗ったことないんだ。

 時間が、かかる乗り物だからな?


「乗ってみる?」


「うん」


 雫が緊張してる。

 景色とかが綺麗だから、それを見せたかった。


「雫、下の景色がいっぱい見えるよ」


 ん? なんか雫の様子がおかしい。


「怜、高すぎて怖い……」


 すぐ雫の座っているところに移ってハグをする。


「大丈夫だよ」


 手が震えているのがわかる。


「雫、お姫様抱っこしたい」


「──えっ!? そんなこと今聞かないでよ!」


 突然、変なことを言ってくるから震えていた雫の手も止まり、照れながら怒っている。


「んじゃ、しよっか。雫が座った状態でもお姫様抱っこできるから!」


「うっ、わかった……」


 雫は座らせた状態で、自分が立って雫の体に手を回してお姫様抱っこする。


 家でトレーニングとかするようにしていたけど、まさか、こんな形で成果を発揮するとは思わなかったな。


 雫は、身長が低いのでお姫様抱っこをすると自分の胸の高さに雫の体がすっぽり収まるので包み込むようにハグして座る。


「恥ずかしい……」


「大丈夫だよ。誰も見ていないから」


 普通のハグだと目を開けた時に、下の景色とかが見える可能性もあったからこれなら何も見えないし距離も近づけて一石二鳥!


「雫、頂上についたよ」


「ここからだと、景色がよく見える。夕日に染まっていて綺麗!」


 確かに、景色を見るのに良い眺めだ。


「ねぇ、雫」


 どうしたのと自分の顔を見ながら首を傾げている。


「雫のことが好き。付き合って下さい」


「──私も好き」


 そう言っている雫の目からは、大粒の涙が溢れているから自分の手を使って雫の涙を拭う。


「好きな人がいるって言っていた時、別に好きな人がいるんだって知って凄くショックだったんだよ……。私が、怒っていた原因も怜は、分からないと思ってた。」


 ぽこぽこと体を叩いているけど全然痛くない。


「本当にごめん。怒っている原因も実はわからないままだった。澪ちゃんが素直が気持ちを伝えるといいって言われたから、勇気を出して告白しようって決めたの」


「早めに告白してほしかった……」


 まさか、雫と両想いとか思ってもみなかった。

 澪ちゃんには、感謝してもしきれない。


「雫には、もっと、お似合いな良い人がいると思って告白とかするつもりはなかった。今日は、雫に振られると思ってたからびっくりしてる」


「そんな人いないもん。私は、怜がいいの」


 そんな嬉しいことを雫は言ってくれる。

 雫のことを大切にしたい。そう、心に誓った。


「雫の恋人になれてよかった」


「私もだよ」


 観覧車が回り終わって、お姫様抱っこの状態をテーマパークのスタッフの方に見られて雫に怒られながら帰った。

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