第17話 温泉

 クラスの子達と一緒にお風呂入っていいか尋ねると大丈夫だと言われたので、クラスの子と脱衣場で服を脱ぎながら、どんなお風呂か楽しみだと話が盛り上がる。


 別館なのに、クラスの女子達とみんなで、入っていい理由がわかった。


「ひろっ!」


 凄い。旅館の雰囲気をちょっと変えるようなお風呂は、大理石を使った豪華な大浴場。


 それだけでも凄いのに、外には露天風呂もあって、夜景の景色を見ながら堪能できる。


 ちょっとした個室もあって、そこにはサウナができるみたい。


 雫と二人で露天風呂に入る。


「最高だね」


「うん、わかるー。とろけるー」


 ふにゃふにゃになって顔がにんまりしている。


「雫、星が綺麗だね……」


「あっ、ホントだ! 綺麗ー!」


 雫の顔を見ながら言った。

 夜空を見ながら言っているから、自分が見つめながら言っているのは気づいていない様子だ。

 いつか、振られても大丈夫だと覚悟できるまで、ちゃんとした告白は出来ないかもだけど今は、まだ──このままがいい。


 夜景を二人で見れたし、長風呂はあんまりよくないから上がる。


 クラスの女子が、みんなでゲームをしたいとなったので自分達、四人も加わって部屋でゲームをしに行くことになった。


「心理戦するカードゲームを持ってきたから遊ぼ!」


 ゲームをいっぱいした後に、楽しさに浸っていた。


 一人の女子が喋りだす。


「みんなって、気になる人や好きな人いる?」


 定番の恋話きたー! 誰から話すのかな!

 気になるー!

 こういう話は、聞くのが、楽しいからウズウズしてしまう。


「私も気になってたんだよねー!」


 別の子も乗って来て、見つめられる。

 あれっ、みんなが、自分の事を見て言ってるんだけど……どうしよう。

 まさか最初に自分とは思ってなかった。雫とかに聞くと思ってたのに。


「あー。好きな子、いるんだよね……」


 黄色い声が、瞬く間に響く。


「誰なの! 教えて!」


 凄くみんなから質問攻めされる。

 好きな人いるって言ったらまずかったかな。

 でも雫にアピールしているからその反応で両想いなら告白したい!


 関係が崩れるとか考えたらまだ怖いし、でも好きって想いが、自分の中にどんどん溜まっていく。


 雫は、どんな反応をするか見ようとする。


 なんだか雫の表情が落ち込んでいるように見える。


「好きな子いたんだ……。その人とは、良い感じなの?」


 雫が、途中で顔をうつむきながら自分の顔をあんまり顔を見ないで話しかけてくる。


 態度が、いつもと全く違う。こんな雫は、今まで一度も見たことがない。


「良い感じか、分からないけど一緒にいて、とても楽しいって思えるよ」


 そっかと小さい声で良かったね、と言われた。


 思ってた反応と全然違う……。

 その反応に気づいたのは、自分含め、真帆ちゃんと澪ちゃんもいつもと様子が違うからわかっていると思う。


 他の子達は、雫の様子の違いに気づいてないから話題を続けている。


 次に雫が指名された。


「私も好きな人がいる。だけど全然うまくいかないと思う」


 し、雫って好きな人いたの……。

 全然そんな素振りを見たことなかったから安心してたんだけど、ちょっとショック。


「雫も好きな人いたんだね。相談とかいつでも聞くよ」


 自分の言葉に何か言いたそうな感じだったけど口をつぐんでクラスの子に向き直して話をしている。


 雫が、その人と上手くいって雫が笑顔になるならそれが一番良いかもしれない。


 その出来事があった後からの記憶が曖昧で結構落ち込んでいるんだなって思った。


 いつの間にか部屋に戻っていて、ベットで誰と一緒に寝るか話し合いしてたみたいだけど適当に頷いてたら、まさかの雫と一緒に寝ることになっていた。


 き、気まずい。あんなに楽しかったのに、何か心にぽっかりと穴が開いたみたいに何の感情もない。


「寝よっか」


「うん」


 ぎこちない会話をして二人で背を向けあって寝る。


 いや、寝れるわけがない。背中には、雫がいて何か喧嘩したみたいな空気だし好きな人宣言もされて気になって眠れない。

 同じ体勢でいるのもちょっとキツイから寝返りを打つ。


 雫も寝返りをしてたみたいで体が向き合う。

 お互い背を向けて数分しか経ってないけど寝たけどもう寝たのか。


 寝れないので雫を眺める。可愛い顔してるなー。

 好奇心に負けて、雫の髪の毛を撫でる。


 さて、寝ないと身体もキツイだろうから寝ることにした。

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