第12話 全学年参加のケイドロ

 ひょんなことからケイドロをすることになったが、ゲームだから先輩後輩関係なくでガチで楽しんでいいとのこと。


 ケイドロとは、警察と泥棒の二つに分かれて、決められた敷地内に逃げる泥棒と泥棒を捕まえる警察のゲームだ。

 捕まった泥棒は、牢屋に連れて行かれる。

 一定時間、泥棒の人が一人でも逃げ切れたら泥棒チームの勝ちで全員を捕まえることが出来たら警察の勝ち。

 先生が、牢屋に入れられた仲間を助けると言うルールをしたらゲームが長くなるからしないみたい。


 広場に集まった生徒にルールと説明がされる。

 危ないことや高いところに登るのは、禁止。

 旅館に入るのも禁止。

 決められた範囲外に行くの禁止。


 と言う条件が課せられた。


 鬼には、分かりやすく赤白帽子をつけるらしい。


 この年で赤白帽子って、キツイな。小学生の時しかしない代物だし、先生も遊び感覚でダイソーで買ったのか?


「説明は、以上だけど何か質問あるか?」


 全校生徒が集まるところで別学年の先生が説明をしてくれた。


 一人の生徒が「先生も参加するんですか?」と言われ先生が答えてくれる。


「先生達は、みんな疲れてるので参加しないです」


 先生が返答した後の生徒のブーイングが、響き渡る。


「先生ー! 多数決で参加するか決めましょう!」


「先生だけゆっくり見物のは、ずるいので一緒に遊びましょう!」


 生徒が言う通り、多数決した結果、先生達も参加することが決定した。ただ、高齢の先生とか省かれて旅館で寛いでくるとのこと。楽しんで来てとゆっくりとその場から離れて行った。


 二手に分かれないといけないので、じゃんけんのグーとパーで決める。


 同じクラスでじゃんけんしたが、雫はパーを出してて自分はグーだったから別々になった。澪ちゃんは、同じチームで友達がいるのに安心したが、真帆ちゃんは、雫と一緒のチームで敵同士になった。


「負けないよ! 怜」


「こっちも本気で勝ちに行くよ! 雫」


 正直、敵同士になるのは、悲しいけど体を動かせるから楽しみ。


 だけど雫って華奢だし、運動とか得意に見えないから心配だなと思いながらグーを出したチームが集まってる場所に向かうと、先に行ってた同じクラスの子が警察だからと赤白帽子を渡してきた。


「あー、警察か。んじゃ、パパッと終わらせて昼食をとるかー」


 そうだねと澪ちゃんも何かお腹空いてきたとお腹をおさえてる。


「澪、お腹空くと動けれない」


「え! それなら牢屋の所を見張り役したいって言わないとだね」


 両チームが二つ別々に集まってから、特に話し合いもしないまま、淡々と牢屋の見張り役が決まり、先生が指示をして泥棒の人達を三十秒間、逃げる時間を与えている。


 みんな、やる気満々だ。それもそのはず、先輩達が話してたが勝ったチームには、何やらご褒美があると耳にしたらしく両チーム、本気モードになっているみたい。


 ただのゲームのはずなのに何でこんな緊張感が伝わってくるの……。


 ストップウォッチもそろそろしたらなるはず。

 先生が事前にゲーム開始の合図は、ホイッスルをすると伝えられている。


ピピピッ──。


 静寂に包まれた中で鳴り響くストップウオッチ。


 それと同時にホイッスルをする先生。


「うおー!!」


 警察側の人達が声を出して、一斉に泥棒のいるところに走って行ってる。


 自分も準備運動も結構前から終えてたし、泥棒を捕まえに行くか!

 雫は、遠くにいても分かりやすいな。でも、男性苦手だから警察側の男子に執拗に触られたりするかも!?

 雫が心配だから悪いけど先に牢屋に入れるのが得策かな。ついでに真帆ちゃんもいたら心強いだろう。


 ほぼ、何もない広場だけどとにかく広い。障害物とかがないから真っ直ぐに進むことができる。


「雫、みーつけたっ!」


「──えっ、怜!? はやっ! 結構距離あったはずなのに……」


 慌てた様子で捕まらないように雫が一生懸命逃げている。

 走って逃げても、すぐ先に回り込むから自分の体力的にも限界が来ると思う。

 だから早めに雫を追い詰め、広場の端っこに誘い込むことができて、雫は左か右のどっちかにしか逃げれない状況を作った。


 ゆっくりゆっくり、目の前にいる雫の元に近付く。

 どっちに逃げるか迷っているが、そんな隙も与えずに捕まえれたら楽だけどね。


 雫が右に行くとフェントをして、左に逃げようとする。


 透かさず雫が逃げた方向に立ち塞ぶ。

 勢い良く雫の前に出てしまったので、自分の胸の中に雫が飛び込む。


「うわっ」


 咄嗟に飛び込んできた雫にハグをする。


「捕まえた」


 ハグをしている雫の耳元で囁く。


 バッと顔を上げて、自分が雫に囁いた片方の耳を手で塞いで、顔を赤らめながら恥ずかしそうにしている。

 その照れた雫の表情がとても愛らしい。


 可愛いな。


「捕まっちゃった……。怜、ハグしてるから距離が近いんだけど……」


「ごめん。ごめん。可愛くてつい、ハグしちゃった」


 ハグから開放されると一目瞭然に雫が、真帆ちゃんのいるところに走って行ってる。


 どうしたんだろ? 雫が向かった方向に向かう。


「あんなに天然たらしだったのか……。末恐ろしい」


 真帆ちゃんが自分を見ながら言ってくる。


「うち、ハグしている現場を遠くから見てたけど……ただのバカップルにしか見えなかったよ」


「──えっ。何か、やり過ぎちゃった?」


 雫は、真帆ちゃんの後ろに隠れてしまっているし、真帆ちゃんは、さっきから阿呆しか言ってこない。


「雫ちゃん、ピュアなんだから心臓に悪いことしたら駄目だよ!」


「やりすぎてしまってすみませんでした」


 反省して雫に謝る。


 なんか、やらかしたなら反省しよ……。


「とりあえず二人とも、牢屋に行こっか。ついでに真帆ちゃんも捕まえたから」


「あー。ゲーム中だったの忘れてたー!」


 真帆ちゃんがご褒美と連呼している間に牢屋の見張りをしている澪ちゃんが見えてくる。


 まだ優勝は、どっちになるか分からないけどご褒美がそんなに欲しいってことだけは伝わった。


 雫と真帆ちゃんを澪ちゃんに引き渡して、引き続き泥棒を捕まえに行く。


 運動してない人は、基本すぐに体力持たなくてすぐ捕まる事ができる。

 だけどスポーツをしている部活の人は、持久戦もしくは逃げ場の無いところに追い詰めるのがいい。


 一人で何十人か捕まえて功績を上げたから、ほぼ泥棒が少なくなった。


 辺りを見回し、残りの泥棒がどこにいるか探す。

 そこで見つけてしまった。


 まじか。泥棒チームにいるのか──。

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