第9話 高級旅館

 ゲームが丁度キリの良いところで終わり、バスもいつの間にか宿泊施設に到着した。


「お世話になる旅館の方がいるからお前ら、挨拶忘れんなよ」


 先生がバスを降りる生徒達に伝えていく。


 バスを降りると目の前には、大自然の中にそびえ立つ和テイストの旅館だった。

 落ち着いた雰囲気を醸し出す建物の中から旅館で働いてると思われる亭主と女将が顔を出す。

 すでに待機している上級生の担任教員達と生徒達に挨拶交わしている。


 聞いた話では、校長先生が気に入っている旅館の一つだと聞いた。


 毎年、同じところの宿泊施設で泊まる予定だったが、別の団体客で既に予約が入っていて難しいとの返事が来たそう。

 困ってた時に、旅館の亭主にどこか良いところは、ないかと相談したところ、自ら名乗り出て貸切にしてくれたのだ。


 校長先生が気に入っているところだから絶対高い。

 それに当たりを回すと敷地面積が広すぎる。

 しかも建物が本館とは別に何軒も別館などがあるみたい。


 「今日の貸切のために壊れるような物は、設置してないとのことだから安心して大騒ぎして大丈夫です」


 事前に旅館の女将が伝えてくれたけど私達が大騒ぎするには場違い感がすごいんだよ……。


 逆に恐縮してしまう。


 上級生の人達も、この旅館が初めてみたいだけど緊張してないのかなと様子を見る。

 泊まる場所の名前は、プリントに書いてたから携帯などで下調べしていたのか、先生と女子生徒のバックが異様にでかい。


 自分の必要だと思った衣類と必需品だけを纏めたバックの二倍は軽く超えていた。


 顔を見ると、特に女子と先生が寛ぐ気満々で余程、楽しみしてたとわかる。


 確かに金持ちの貴婦人か殿方が、休日に泊まりに来るような場所に見えるのは確かだ。


 そんな想像を繰り広げている間に、まだ到着してなかった、一年生の別のクラスが乗っているバスも無事に到着している。


 みんなが、揃ってから旅館にお世話になりますと旅館に働いている方々にも挨拶を済ませてから、旅館に足を踏み入れた。


 なんと学年は、もちろんのこと、別のクラスも分かれてそれぞれ泊まるところを事前に決めてくれてたみたい。

 自分達のクラスは、離れにある旅館に宿泊することになった。


「やべー、そういや個室の部屋決めしてねー。お前ら、男は五人、女は四人のグループを作れ」


 先生の急な話に戸惑いを隠せずにいる生徒達。


「いきなりかよ!」


「急に言われても決められないよー」


 クラスの子から様々な声が飛び交う。


「んじゃー? 先生が決めるか、じゃんけんで決める、もしくは、自分達で決めるの三択だったらどれがいいんだ?」


 そんなことを聞かなくても、すぐ答えは出てくる。


「そ、そりゃー、自分達で決めるのがいいです!」


「だよなー? 早くしろよー。選べないとか言ったら勝手に決めるからな」


 先生と言葉の言い合いで勝つやつなんていない。黙って言うことを聞くのが、一番の得策だと気付かされる。


 一緒に暮らしている時、言うことに従うのが、一番マシだと身をもって実感しているからわかるのだ。

 今まで散々、パシられたりして苦労した甲斐があったわとしみじみ思う。


「怜、私と同じ部屋でいい?」


「もちろん!」


 んー、それにしても雫は、確定として他の二人は誰にしようかな。

 出来れば、一気に二人を獲得したい。

 そう思っていると他の女子は、すでにグループができているけど、よく見ると二人残っている子を見つける。


「おーい。こっち、二人しか決まってないから、一緒にグループにならない?」


 掛け声に気づいたのかこちらの顔をガン見してくる。


 途端に「あっ!」と声が聞こえた。


 何事かと近づくと、遠くて認識出来なかった顔がはっきり見え出す。

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