第8話 楽しいひととき

 バスでは、アイマスクを着用して、一眠りしようかなと思ったが、バスの近くに座っている席の男女が真後ろで楽しそうにゲームをしている。


 自分には、関係ないだろうから大丈夫だと思っていたが、後ろから小さい声で話しかけられた。


「なー、千葉。ここの近くに座っている人でゲームしないか? 出来れば、雫ちゃんとも遊びたい」


「人数も多い方が、ゲームも盛り上がるしな!」


 雫をゲームに誘ってくれないかと頼まれる。


 此奴ら、そんなに雫と遊びたいのかと眠い目を擦りながら後ろに座っている男子に言う。


「雫に直接、聞いた方が早いぞ? 後、昨日寝れてないからパスする。雫に聞いて参加するか聞いてきなよ」


 男子も自分が参加しないとわかり、話をかけなくなったのでアイマスをつけて眠りにつくのを待つ。


 目を休めているからなのか、周りの話がよく聞こえる。

 皆、楽しみにしてるからかバスの中で、はしゃいでる人が多くて中々寝付けれない。


 あー、寝れないなと思っていると先程、ゲームをしないかと会話してきた男子が隣にいる雫をゲームに誘っている。


「雫ちゃん、これから皆でゲームするんだけど、一緒に遊ばない?」


「え!? ゲームですか! 楽しそうですね! 誰が参加するんですか?」


 これは、興味津々だから大丈夫だな。

 雫が自分以外のクラスメイトと関わることがなかったからホッと一息をつく。


「今の所、ゲームしているのは、バスの近くに座っている人だけど千葉は、寝不足だから参加しないって言ってたなー」


「あっ、そうなんだ。でも隣で、うるさくされたら怜が眠りにくいと思うから今回は大丈夫! 誘ってもらったのにごめんね!」


 ──えっ。

 今、ゲームの誘い断った? どうしよ。めっちゃくちゃ気を使わせてるじゃん。


 それから少し経ってバスの後ろの席にいる生徒達がゲームで盛り上がっている声が聞こえ出す。


 雫は、何をやっているのか気になった為、アイマスクを外してみる。

 雫は、大人しく小説を読んでいた。


 どうしよう。凄い罪悪感を感じる。せっかく雫がクラスの子と仲良くなれるチャンスを邪魔しちゃったかも。


 そんなことを考えてると視線に気づいたのか雫がこちらを向く。


「あれ? 怜、大丈夫? バスの中だと眠れない?」


 心配そうな顔で覗き込む。


「うーん、少しは、寝れたし平気だよ! 雫は、バスの中で本を読むの酔わない?」


「私は、酔わない体質だから何でもできるの!」


 そう答える雫は、笑ってはいるが寂しそうに見えてしまう。


「もう寝れないと思うから、後ろにいるクラスの子と、一緒に混ざってゲームできるか聞こうよ!」


「えっ……。でも私、誘われて断ったから今頃、遊びたいって言ったら迷惑かけちゃうよ……」


「大丈夫だよ!」


と雫に言い聞かせて、ゲームしている男女に割り込んで話に行く。


「なんか凄い楽しそうにゲームやってんじゃんー。おかげで目が覚めちゃったよ」


「お! 怜がきた。うるさくしすぎたかー! ごめん!」 


 全然気にしなくていいよと、口にする。


「あっ! 今、丁度始めたばっかりだから一緒にゲーム、参加してよ! 絶対、楽しくなるわ!」


 クラスの子達は、ゲームに参加するのを快く受け入れてくれた。隣には、手をもじもじとしていて今にも参加したいっていうのが丸分かりな雫。


「あれ!? 雫ちゃんも一緒にゲームしようよ! ほらこっちに来て来て!」


「最初に誘ってくれた時、断っちゃったけど私も参加していいの?」


 雫が、誘ってくれた男子生徒に目を向けて申し訳なさそうにしている。


「全然いいよ! 千葉が寝ようとするのが悪かっただけだから。雫ちゃんは、気にしないでいいよ!」


「それは、悪かったと思ってるよー!」


 眠気に勝てるものなんて、あんまりないから。


 男子達が意気揚々に話しているのが何故か気にくわないが自分が悪いと分かっているから内心、反応に困ってた。


「ゲームは、手加減したことないから覚悟しろ」


 一丁前に自分から喧嘩を吹っかけて、トランプで定番のババ抜きで場も勢いも増す。


 皆が笑い合ってゲームすること自体、これが初めてだったから生徒同士の距離も確実に縮まったと実感できる。


 そして、余りにも白熱したバトルをしてしまったため結局、バスの中でやっぱりお前が一番うるさかったなと先生に言われる結果となった。

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