第7話 秘めた想い

 雫の席を見たら、いつの間にか来ている!


 なんでか、わからないけど雫を見つめて間もなく、すぐに視線がぶつかる。


 あれっ? 見てそんなに時間も経ってないの目が合う。もしかして、雫は、ずっと自分のこと見てた?

 それに何だか怒ってるような顔している?


 雫も目が合うとは、思ってもなかったようで表情が、一瞬焦ったような顔つきになって自分とは真逆の方向に雫は、ぷいっとそっぽを向く。


 えっ! 雫とは確かに視線があったはずなのに……。そっぽを向かれショックを受けてしまう。

 漫画で言うショックを受けた時に流れる効果音が今にも頭上に出てきそうな感じ。


 仲直りのチャンスは今しかないから話しかけるか!


「雫、おはよ」


 雫が座っている机から真正面に手を置いて、そっぽを向いた方向に顔を傾ける。


 微かに小さい声、耳を近づけないと聞こないほどの距離で「おはよう」と自分に向けて挨拶してるがやはり顔は、こちらを向いていない。


「雫、怒ってる? 何かしちゃった? 怒らせちゃったみたいだからごめんね!」


 必死に謝って許しを請う。


「別にー。怒ってないけど、私だけじゃなくて他の女の子とも仲良しなんだなーって思っただけ」


 うわ──どうしよう!

 やっぱり怒ってる理由って真帆ちゃんと会話してたからだよね!? いやー、まさか嫉妬してくれてるとか?

 真帆ちゃんの頭をぽんぽんと撫でている姿も見られてるかな……?


「朝の光景をもしかして見てた?」


「見てたよ。怜は、誰にもでも頭を撫でてるんだね」


 妹いるからつい、人の頭を撫でちゃう癖が色んなところで、出ちゃってるんだよなー。


「えっと、妹がいるから人の頭を撫でる癖が無意識に出ちゃうんだよね……。」


 これは、事実だから嘘はついてない。


「へぇー、怜から見たら、私って妹みたいな存在なの?」


 雫がムッとした表情をこちらに向ける。


「そんなわけないじゃん! 雫に触れるのは、凄く緊張するんだよね」


「ふーん、なら許す」


 明らかに不機嫌だったのに、上機嫌に早変わりする。


「え!? 今まで怒ってた理由とか知りたいなーって思ったんだけど聞いてもいい?」


「秘密……」


 照れ笑いしながら伝えられる。


 訳も分からず無事、雫とは仲直りできた。

 外を眺めると学校の校庭にバスが停まっている。


 バスが来るまで教室で待機するように、先生に言われてたので席に座っていた生徒がざわめきだす。


「よっしゃー! バスだ! トランプあるからバスの中でしよーぜ」


「合宿に行ったら何するんだろうねー? 楽しみー!」


 ぞろぞろとバスが停まっているところに生徒達が向う。


 一緒に行こっと、雫が自分の制服の袖で引っ張てる。


「うん。行こっか」


 教室を出て、楽しそうに隣を歩く雫に見惚れてしまう。

 身体が自然と近づけてしまい、肩と肩が触れ合う距離にいる。


 多分、この関係性が一番良いんだろうな……。

 この想いに気づかれることなく、仲が良い友達としてこれからも過ごしていきたい。

 バレたら今の関係性が壊れてしまう。そんな気がしたから。


 雫を好きだという気持ちに蓋を閉めた。


 外に出ると先生と生徒達がすでに集まっていて、バスに乗り込んでいる。


「お前らが最後だぞ。みんなを適当に座らせてるから空いてる所に座れ」


 先生の話を適当に聞き流してバスを乗り込む。


 先生の前を横切ろうとするといきなり先生からチョップをもらう。


「いたっ!」


「なんかお前、バスの中で五月蝿くしそうだから先に言っておく。騒ぐなよ」


 手を出した後に言うとかありえない。

 そう心の中でキレながらも小さい声ではいと返事する。


「それに、まだ騒ぐかどうかもわからないのに酷すぎるわ」


 ぶつぶつと独り言を呟きながら空いてる席を雫と横並びに座る。


 昨日の夜は、寝付けずにいたから雫と仲直り出来た安心感から眠気が襲ってきて、今にも寝てしまいそうだ。

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