第4話 席替え戦争

 自分達で席を決めれるようになったから、雫の席の隣に移動するために動く。


「雫、隣いい?」


「私も怜の隣に、行こうとしてたから全然いいよ!」


 無事に雫の隣をゲットできたと、安堵したのも束の間、男子生徒達が口々に物申してきた。


「ちょっと待った! 俺も雫ちゃんと仲良くなりたいから、隣の席に座りたい!」


「いやいや! 抜け駆けずるいぞ!? 僕だって隣の席に座りたいんだから!」


「隣は、人気だから後ろでもいいわ」


「まだ前の席が決まってないならそこにしようかな」


 雫の席は、教室から右端にいるので、隣の席の取り合いが凄いことになっている。


「ちょっと待てよ。雫ちゃんが、真ん中に行けば俺らでその周りに、座れば解決じゃないか?」


「お前、頭いいな」


 一人の男子生徒の意見で、話が進められようとする。


「はー、男共。鳳城の意見は、どうした? 鳳城が嫌だって、言うかもしれないだろ? 本人いるのに勝手に話を進めるな」


 先生の救済措置が、入ったおかげで男子生徒の暴走が止まった。


「確かに、男に囲まれたら流石に嫌だよね」


 女子生徒達も男の異常さに、さすがに言葉にする子が多かった。


「いや、普通に怖いから止めなよ」


 女子生徒の言葉に、男子生徒も反省の色を浮かべる。


「で、鳳城はどうしたい?」


 先生が、雫に問いかける。


「私、男の人が苦手だからあまり席の近くにいないところが良いです」


 ごめんなさいと男子生徒の方に、体を向けて謝る。


「それなら仕方ないかー。三年間同じクラスだしそれまでに、男性が苦手なの克服するといいな」


「そうだなー。学校生活で行事もこれからあるだろうから、それまでに軽く話せるぐらいの関係になりたいな」


 最初、危ない方向に向かってたけど雫のことを理解してくれて、雫が嫌がることを無理強いもしなくなった。


 話し合いの結果、雫の席は端っこの席で上下左右を女子が取り囲むように座ることになる。


 もちろん、自分が雫の隣にある席をゲットできたから、一安心した。


「私、鳳城さんと話したかったから嬉しいー! 遠くからでも可愛いって思ってたけど、近くで見るとめっちゃ可愛いね!」


「鳳城さん! 自己紹介の時に、お菓子作り好きって言ってたから、お菓子研究会って言う部活の見学を一緒に回りたいって思って話しかけっちゃった! お菓子作り好きな人が集まる女子に人気な部活らしいよ!」


 クラスの女子と打ち解けてるし雫も嬉しそうに話してる。良かったー。友達が、作れるか心配って言ってたから。


「お前ら、席替えが長かったから帰宅時間になっちまったじゃねーか。ホームルームして帰るぞ」


 はーいと生徒全員が嬉しそうに言う。


「言い忘れてた。お前ら、まだ知り合ったばかりで、まだ仲良くない人のが多いと思う。だから、親睦を深めるために、学校行事で毎年行われる合宿がある。明日、行くから必要な物を書いてる、プリントを配るから後ろに回せ。忘れずに泊まりセット持ってくるように」


 まじ、楽しみ! 他の子とあんまり喋る機会もなかったから喋りたいな。


「授業がない! 最高!」


「先生、遊びグッズは持って行っていいんですか?」


「お菓子、いっぱい食べたい!」


「財布とか、一応持って行った方がいいかな?」


 先生に質問が投げかけられる。


「ゲーム機は、駄目だ。これは流石にわかるよな? お菓子の持ち込みも禁止。この二つを持っている生徒を見かけたら、来年から合宿に参加できない。トランプは持って行っても大丈夫だ。ちなみに合宿先に少ないがお菓子が並べられている購買があるからそこで買え。以上、今日のホームルーム解散」


 必要な事を言って、先生が帰るように生徒達を促す。


「後、学校外で不審者がいたから捕まったけど、もし変な輩に絡まれたら、すぐ逃げて警察に電話すること。学校にも連絡してくれ」


 生徒達が、大っきい声で返事して皆、帰る準備しながら仲良くなった友達と帰ってるのが目に入る。


 皆、帰ってるし自分も帰るか。


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