第2話 謎の感情

「うわ、先生いるじゃん。連絡もしてないのに、先生が立ってるのっておかしすぎる」


 遅刻とか、よくしてるからわかるけど大体、時間が大幅に遅れていると校門で待ってること自体ないはず。


 横にいた雫が、身体を強張らせて徐に呟く。


「怒られるの久々だから緊張しちゃう」


「覚悟を決めて行くか!」


 自分の言葉に首を縦に大きく振る雫。


 先生の目の前まで来たところで、その人物が身内の人だと気づいた。


 あー、そういえば、この学校に入れたのも、その身内のお陰だったと気づいて項垂れる。


「先生、遅刻しました。校門に立ってますけど何かあったんですか?」


 知らない人のふりをしてやり過ごそうかな。


「なんだ、お前らの事だったのか」


 先生の第一声が、理解出来なくて頭が真っ白になる。


 てっきり叱られるのかと思ったので、拍子抜けしてしまった。


「先生、言葉が理解出来ないんですけど、どういうことですか?」


 ぶっきらぼうに言葉を言い放つのみて、先生が、一呼吸おいて喋る。


「言葉足らずで悪かったな。怜」


 先生がこちらに向いて、口元の口角を上げているが目が全く笑っていない。


 こわ。あんまり挑発した言葉を使ってないのに、なんか怒ってる。いやいや、恐れることはないだろう。関わらないように、ひっそり過ごそうかなと目の前の出来事に目を逸らす。


「怜、先生と知り合いなの!?」


 雫が、凄い勢いで自分に問いかける。


 気まづそうに、こくりと頷く。


「自己紹介が遅れたな。千葉 駿介ちば しゅんすけ。怜のお兄さんだよ。」


 自分が答える事無く、兄の駿介が答えた。


「いやー、警察官から電話があったんだよ。京蘭きょうらん高等学校の子が、不審者に絡まれて、まだその不審者が捕まってないって連絡がな。学校に不審な人物見かけたら、連絡をしてくださいって言われたから。校門で遅刻した生徒が無事に来れるか、ここで待機してた。一体、誰かと思ったら雫は、巷で有名だもんな」


「ふーん。そうなんだ」


 知らなかった。でも可愛いから有名になるのも、頷けるけど今まで雫の話が自分の耳に入った事は、なかったからなんかモヤモヤする。

 何でモヤモヤしてるのかも、分からないから余計腹立つ。


 不機嫌になって、無言になってしまう。


 苛立っている表情を悟っているだろうが、兄の駿介は、無視をして話し出す。


「立ち話はお終いだ。皆、体育館に集まってるから行ってこい」


 二人で声を揃って、小さい声で「はい」と返事して、体育館に行く。開会式は、すでに始まっている。

 もう閉会式をしている最中だった。邪魔にならないように、保護者席の隣にパイプ椅子が2つ並べられていたところに座る。


「先生が用意してくれてたんだね」


 と雫がどこに座るか、分かりやすくしてくれて助かったねと小さい声で会話した。


 座ってから、そんな時間が経たない内に、開会式と閉会式が終わって、教室に戻るように各クラスの先生達が生徒に声がけしている。


「何処のクラスか聞いてないなー。別のクラスに間違えて、ついていくと面倒になるよね」


「怜のお兄さんなら知ってるかな?」


 体育館の中が、人の声で五月蝿くなるのを見て雫も返事を返してくれた。


「んー、聞いたらわかるかもだけど、その肝心な人がいないからな」


「あっ、お前ら探したぞ。てか、そこに座ってたのか。どうりでこないと思った」


 こちら来て会うやいなや、何故か兄貴からため息をつかれる。


 何故、兄貴は第一声が、理解出来ない事しか言わないのだろうか。


「ちなみにそこの席、丁度二つ空いてたみたいだけど、用事があって来れなくなった人の席だ。お前らが座るところは、別に用意してたんだけど」


 二人で、顔を見合せて笑ってしまう。


「なんか保護者からの視線を感じてたのは、そのせいかー」


 急いでいたから、保護者の席のところしか目がいかなったから仕方ない。


「何でそこに座ってるのって、心の声が漏れてる感じの表情で見られてたもんね。二人分、空いてたから勘違いしちゃった。恥ずかしいー!」


「ったく、心配して損した。後、お前ら、そんなに仲良かったんだな」


 呆れながら、私達の事を見ている兄貴もちょっと笑っている。


 そんなこんなで無事、入学式を終えた。

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