第20話 領地に帰ろう

今年の社交シーズンが終わり、収穫の秋を迎える前に領地に帰る事になったよ。


実は病弱だったせいで、僕が領地に帰る様になったのは記憶喪失事件が起きてからなんだ。


だから実は今年で3回目。ハハ。少ないしー。



スペード伯爵家の領地は海沿いにあって、案外王都にも近い方だと思う。


何でもご先祖様が戦いで大活躍して、褒美で良い土地が貰えたとか。


持つべきは有能なご先祖様かな?笑




もちろんお父様も領地経営はちゃんとしてて、我が家は武芸優れてるだけでなくて、財務の方も有能なんですー。


僕もちゃっかり協力してるけれど、トランプカフェなんかは多角化経営戦略の一角デスヨ。ホホ。


コレは僕が何となく思いついた事を言ったら、お父様が俄然その気になっちゃったって話。


そう、イケメンお父様万歳です。




やっぱり学院のお兄様は忙しいみたいで、僕達が王都に戻る直前に少し顔見せるだけらしい。


ああ、僕お兄様不足で倒れちゃうんじゃないかなぁ?






懐かしの我が家に帰ってきた~。ってどちらかと言うと別宅に遊びにきた感じなんだけどね。


王都に比べてここは敷地も広いし、もふもふもいっぱい居るし、何たって海が僕を呼んでるよ。




広大な領地の外れに丁度ラグーンの様な入り江が出来てて、毎年そこに泳ぎに行くのが楽しみな僕。


まだまだ残暑で暑いし、僕のおへそ上ぐらいの浅瀬が続く丁度良い深さのラグーンはお父様からも許可が出てる。


従者セブが一緒ならイイよって。僕のセブって信頼厚いんだね?




領地に到着して早速、毎日の様にラグーンで遊んでる。




エメラルドグリーンのキラめく穏やかな波間にカラフルな魚が時々光って見えるよ。



大概の貴族は海で泳ぐとかってしないらしいんだけど、僕は何でか勝手に身体が動いて潜ったり、速くも遅くも泳げるんだ。


セブはお兄様ぐらい背が高いから、このラグーンだったらザブザブ歩けていざとなったら泳ぎ疲れた僕をすくって運んでくれそうだ。


そんな話をしたら、泳いで戻れなくなるまで疲れ切らないで下さいって嫌な顔されちゃった。


でも急に電池が切れるのが子供の仕事だよね?あ、でも僕貴族だから体面が大事だった~。




今日もラグーンの奥で一人のんびり潜ったり泳いだりしていたら、波打ち際に誰か2、3人立ってる。


ちょっと潜水で近寄って顔だけぴょっこり出して様子をうかがっていたら、その人間たちはひどくびっくりした顔で僕のこと凝視してたっぽい。


しかも人魚とか聞こえるんだけど。。。


ヤバい、笑えてきた。


すっかり面白くなった僕は、ちょっと揶揄いたくなって、スーイスイと波打ち際に近寄らない様に軽やかに泳いだり潜ったり。


人間たちは、もっとも僕も人間なのは間違いないけれど、その度に興奮した様にこちらを指差してた。



セブは入り江のスポットでランチセットを用意してるんだけど、丁度人間たちからは死角になってる。


僕もちょっと飽きてきちゃったからサービスで大きく人間たちに手を振って潜ってスポットまで泳いでいった。




ふふふ、夏の思い出に人魚はいかがでしょう。

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