魔法魔獣少女 サイクロコロンは、必殺技の練習に余念がない

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

目からビーム

『魔法魔獣少女 サイクロコロン』が、ポーズを取りながら片目を閉じる。


「ビビ……ビーム!」


 コロンの目から、怪光線が放たれる。


 光線は、公園の岩場に置いた空き缶に「コンッ」と当たった。

 凹んだ缶が、情けない音を立てて落ちる。


「ダメだな。こんなんじゃモンスターを倒せない」


 オレは、缶の切り口を確かめる。

 

「うえええ」


 ドッと疲れているのか、コロンのパックリ割れた衣装の背中から、大量の汗が吹き出す。



 魔法魔獣少女「サイクロコロン」は、古代の魔物「サイクロプス」の力を受け継いだ魔法少女だ。


 幼馴染のオレは彼女のサポート役で、いわゆる「淫獣枠」だ。

 武器や衣装を提供する。


「サイクロプス砲」という、サイクロプス伝統の技を撃てれば勝率も上がるかと思った。

 が、魔素の薄い現代日本でそんな魔法が扱えるわけもなく。


「普通にステッキで殴ったほうが早いよおお」

「ダメだ。もう何本目だと思ってるんだ? 作り直すこっちの身にもなってくれ」


 相変わらず、筋肉に頼ろうとする。そこは、魔物要素が強すぎる。

 これ以上ステッキを折られては、コロンの家のお財布にも関わるのだ。


「そもそも、お前がウインクできないとは」


 コロンは、自力で片目を閉じられないのだ。

 

「難しいよお」


「こうだよ。できないか?」



 オレが、代わりにやってみせる。


「どうだ?」と聞いてみたが、コロンはオレの顔を見てボケーッとしていた。


「コロン?」

「はっ。ごめんなさい。見とれていました」

「あかんがな!」


 まったく。こんなんでよくも、先代は彼女に地球の未来を託したなぁ。


「ごめんな。もっと適格者がいれば、お前を危ない目に合わせずに済んだのに」


 ずっと戦うシーンを見て思ったが、コロンは性格が戦闘向きではない。

 殴れば強いが、メンタルが弱い。なにより、ウインクができないから必殺技が撃てない。

 

「……ううん。いいの。わたしががんばれば、代わりに戦う人だって現れないんだから」


 コロンが立ち上がる。


「うわ。来たよ!」



 公園に、魔獣が現れた。


「フヒヒ! 未熟なうちに魔法魔獣少女を倒せとボスのお達しだ!」


 トカゲのような怪人が、長い舌で細長い口を舐め回す。


「ええい、逃げろ! 技を使って魔力が切れかかっている状態で襲われたら!」


 しかし、コロンは逃げない。


「待ってて。すぐ片付けるから」



 コロンが、ウインクした。ごく自然に、ウインクができている。


「おお、ウインクできてるぞ!」


「わあい、やったあ」


 コロンが、飛び跳ねながら喜ぶ。


「ひぎゃああああああ」

 

 ビームで怪人を八つ裂きにしながら。

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