飛行機 闇の中

飛行機の窓から、雲が広がっている。真っ白の世界で、何色にも染まっていない。ただ、そこから地上が顔を出すことはなかった。雲の上を走行しているだけで、どこか自然と楽しくなっていく。

 空気がだんだん薄くなって、息をすることが辛くなっていく。そして、だんだん寒くもなっていく。

「落ち着てください」と、慌てているキャビンアテンダントの声が響いている。それが、乗客の不安を煽っているようにも思えてくる。

 雲の中を沈んだり、登ったりしている飛行機。機体はゆらゆらと揺れている。「何が、燃料切れだよ」「死にたくない」「もうだめだ」と周りでは叫んでいる。

 どうにもならない走行不能な飛行機が、身勝手な動きをして、安定することはなかった。悲鳴が広がって、死を覚悟できない人たちが、泣き叫んでいる。このまま、山にでもぶつかって、痛みを感じず死んでしまうのかもしれない。

 窓からは、まだ雲しか見えない。不安と恐怖に慄くしかなかった。ずっと、外を見て、何も感じないようにしていると、なぜか、すべてがどうでもよくなっていく。酸素マスクをしているふりして、装着していなかった。息が苦しくなって、眩暈を感じる。もう死ぬのだから、出来るだけ、何も感じない状態にしていたかった。

 ガタガタと揺れ始めて、子供の悲鳴と、女性の金切り声が響き渡る。飛行機は、急速度で加速して始める。急降下して地上に突入していく。本当にもうダメなんだ。

 そう思った、でも、機内に大量の水が入ってくる。これは、飛行機が、山ではなく、海に突っ込んでいったんだろう。大量の水が口に入って来て、気を失ってしまった。目が覚めると、左足の感覚がなかった。

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