人間


 あぁ、奴らに対する感情と言えば、この上ない憎しみ以外言えようか。

 奴らはまずテリトリーを広げ過ぎだ。この前まで我々の仲間が住んでいた心地よい住居も生産性の無いコンクリート道路に変わってしまった。我々はあの環境で生きることは無理だ。さらに、その工事の途中では、仲間があろうことか生き埋めにされてしまった。この所業、たとえ暴虐の王である熊でさえしないぞ。

 奴らの恐ろしいところと言えば、秩序を乱す生態だろう。

 我々、生物は食って食われの関係。つまり、弱肉強食の世界に生きている。これは我々自然界の秩序を保つために存在するのだ。

 プランクトンは魚に食われ、魚はたぬきに食われ、たぬきは熊に食われる。しかし、この流れの中で熊は圧倒的に強者に立っていそうなものだが、獲物だって食われてばかりではない。魚は、岩陰に隠れることができるし、たぬきも逃げることがある。これにより、捕食者や熊が常に食料へたどり着けることは無く、時に冬を越せず死んでしまう熊もいる。ここが自然界のうまいところであり、自然秩序を長年保てている原因なのだ。

 せいぜい、人間なんてこの自然秩序の中ではたぬきを食って熊に食われるような立場にいるはずなのだが、これがおかしい。人間は、魚を食っているのに、熊に勝っていた。

 この前、恐ろしいことにその現場に立ち会ってしまった。人間が熊に見つかったと思いきや、人間が持っていた変な棒状のものから激しい音と火花を散らし、熊を怯ませた。その後も、ニ、三回同じことを繰り返した後、熊は動かなくなってしまった。

 あぁ、なんてことだ。あの非力そうな棒で熊を殺してしまった。しかも、人間はその熊をテリトリーに持ち帰ってしまった。きっと、熊も食うのだろう。これは、自然秩序を乱している。恐ろしい。

 このように、人間は恐ろしい生物だ。できるだけ関わらないほうがいい。

 さて、私はそろそろ冬眠するが、奴らに生き埋めにされないよう気をつけるとしようか。


著者 住処を失った蛙

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愚痴 庭鳥 十坂 @uka-zen

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