フローニア魔法学園に入学するために

「明後日には、学園に出発ですか……」

「学園については、ご存知ですか?」


 エドワードさんが、首をかしげて私を見る。


「いえ、ほとんど知りません」

「まぁ確かに、主人公である藤岡友理奈目線から見た学園だけだと、情報が少なすぎますね」


 彼は勝手に納得してくれる。


「学園には、執事同伴での入学が許可されていますのでご安心を」

「おお、それならエドワードさんは連れて行けるんですね」

「あと、必要であればメイドも連れて行けます」

「それは頼もしい」

「とはいえ、わたし達と同じ境遇の人間がいるかどうかですけどね」

「いればいいですねぇ」


 エドワードさんは私の部屋の本棚に歩み寄ると、何冊か選び取って、勉強机の上に並べた。『フローニア魔法学園入学の書』『フローニア魔法学園で学ぶために』などなど、すべての本のタイトルに、『フローニア魔法学園』の文言が含まれている。


「フローニア魔法学園、それがエルフレーダお嬢様の入学する学園の名前です」

「なるほど、このあたりの本を読みこんでおけば、一通りのことは分かると」

「おそらくは。わたしは公式の設定集は読み込んでいますので、そちらに載っている範囲に関しては詳しいと思います」

「頼りにしてます」


 物語の本がない現状では、活字で書かれた本を読むことができれば万々歳だ。

 寝る間を惜しんで、ベッドに本を持ち込んで寝転びながら読んでいたのが懐かしい。とにかく、『フローニア魔法学園』に関する本を読み漁ろう。


「なんならお父様の書斎の本も借りてきたり、本屋に行って本を立ち読みしてもよさそうですね」

「エルフレーダ様の父上は、エルフレーダ様に甘い設定です。うまく丸め込めば、こちら側の味方につけることもできそうですね」

「お父様、私に甘いんですね。それはいい情報を知りました」


 お父様は爵位、伯爵。お金持ち。

 彼を味方につけることができれば、色々と経済的には楽。


「あ、あと私、少し考えていたんですが……」

「何でしょう」


 顔をしかめたエドワードさんにあることを耳打ちする。

 私が『ロイヤル・プリンスラヴァーズ』をプレイしていてエルフレーダさんの性格で感じていた、改善点。

 プレイヤーである私、美奈坂詩音が性格的に得してきた部分を、エルフレーダさんは持っていない。

 女神様は、元のゲームとは違うストーリーをと言っていた。

 元のエルフレーダさんの性格のままじゃ、違ったストーリーは作りにくい。ここは私の性格に多少寄せた作戦で、行ってみようと思う。


 エドワードさんも最初はびっくりしていたけれど、やがて頷いて言った。


「そうですね。固定観念に縛られていてはいけませんね。物書きのエルフレーダ様の作るシナリオに、お付き合いしてみましょう」


 よし、まずは思った通りに行動してみよう。

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