第2話

「畜生よ、どこか行け」

 アイツに言っていた。

 アイツは消えた。

「うぬよ、ワシを助けてはくれぬか」

 そう目の前の異物は言っていた。

 そうだ足と腕を両断された、化け物。

 しゃべる人形と言っても良いぐらいだ。

 そんなきれいな容姿をしているから、僕はそんなことを思った。

 まるで手と足がない人形だなと。

 僕は無視をした。

 魔物と呼ばれてもいるがアンノーンとも呼ばれている。

「もう面倒ごとはこりごり」

 たとえ阿弥陀の一件があったあと僕は次の魔物に襲われたんだ。

 もう良いじゃないか。

 そう――僕はそう思った。

「助けぬか!! 助けて――助けて」

 僕は何を言っているのかわからないくらいに精神は疲弊していた。

 でも唯一言えることがある。

「自分で立ち上がれ」

 そうだ、阿弥陀の一件そして僕のはじめの悪魔との遭遇。

 僕は自分で立ち上がって見せた。

 阿弥陀の場合もそうだ。

 人間はつらいことがあったとき自分の足で助かる。 でもどうだ。

 この女性は……

「ワシはかのアリス・ウルフェエイス・ディアボロスデあるぞ。階級は今は亡きスタフェリア・アブソリュータ・ウロボロウスを破り覇権を握った」

 悪魔の親玉。

 アンノーンの親玉だとは――

 ――僕は知るよしもなかった。

「契約してくれ、そうすれば世界はお前のものじゃ」

「能力者のタスクのことをしらないんですか」

「タスク、スタフェリアの核を持った。水流タスクじゃな」

「そいつがすべてを蹴散らすでしょう」

「黙れ」

「あなたも組織にやられます。まあ僕と契約しても、あなたは僕と一緒に死ぬでしょうね」

「貴様怖いのか」

「いえ、死ぬのなんて怖くありません」

「好きな女の子がいる。もしワシが完全復活して、そいつを殺したらどうじゃ?」

「そんな脅し聞きますか?」

「畜生、畜生、畜生、畜生」

 ありったけの憎悪を吐き出した彼女。

 僕にはかわいそうには思えなかった。

「なら提案があります」

「なんじゃ」

「僕と融合をして僕の子分になってくださいよ」

 口からペンと紙を取り出した。

 魔法師のかじりでもあった。

 だから魔物から狙われた。

 魔物から提案もされた。

 魔物に襲われた。

「ここに名前を書くだけで良いんで」

「お前、そんなものにワシを生き返らせるものがあるというのか」

「死後も契約されますがね」

「そんなものにサインするか」

 僕は、圧倒的に、綽々と、早々に、早早と、手短に言ったのだった。

「じゃあいいです、さようなら」

 人型は幼女となった。

「牛じゃ、牛の悪魔じゃ真名はモラクスじゃ」

 ペコペコと叩いてきた。

 だから牛肉の生の匂いがしたんだ。

「じゃあ書け、追っ手に追われてるんだろ」

「書きとうないぃい、書きとうない……」

 泣いていた。

 女の子を泣かせるのは最低だと阿弥陀に言われるだろうな。

 まあ僕はそれでも良かった。

 話し合いのテーブルをここで用意しなければならない。

 それで甲を為したんだ。

 悪魔と契約するにはこちらがわのできうる手段を豊富に使って、やらなければならない。

「追っ手が来たぞ」

 僕は脅かすように言った。

「書く、書くからまてい」

「索敵」

 式神を辺り一面に散らばらせた。

 一秒が十秒になる時間稼ぎ。

 索敵もできる品物だ。

「ご主人、また使役する魔物を増やすんですか」

「良いから相手の情報をくれ」

 スマホにそう話しかけた。

 スマホの中にも電子による悪魔が住んでいる。

 新しい魔法の家系、承引時家による魔物の使役。

 それは普通魔法を持った一族は、根源は自分という思想を持っている。

 それはだれしもが持つ普通の見解だ。

 スマホの中に入っているのは、承引時家に代々伝わる悪魔だ。

 スマホの中に入っているのはマクスウェルという名前だ。

 なぜマクスウェルの実験から来ているのか。

 それは人間の味方をするという一種の思考の逆転が起きたからだ。

 だからマクスウェルの実験とは全く関係ない。

 彼女の食事は知識。

 しかしすぐに忘れるようであまり使えない。

 だから僕が索敵と鑑定の両方のスキルをすることに特化させた。

 それが今の状況だ。

「タスク君もいるのか」

 視界が電子化される。

 めがねにも細工している。

「勝てる見込みがない」

 撤退した。

 幼女をつかんで。

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