最強の魔法師、最上級の魔物を従え、スローライフを満喫する模様

ガブリアス

第1話

「なあ化け物の噂聞いてるか?」

 僕は彼女にそう告げた。

「ああ、知ってるうちの子も何人も病院送りなんだっけ」

 夕焼けと、髪を耳にかける仕草をする女性。

 なんだ知っているのか。

 彼女の名前は、阿弥陀楓子あみだふうこ

 わけあって、彼女とは縁がある。

 だからこの秋風の中、学校の中型テントを二人で立てた。

「いくら悪魔の所業だからといって警察は動かないのかよ」

「あくまで噂だからね」

「でもさ、さすがに体育祭前だからと言ってこんなにも注目されないって」

「あの、、、が介入してるんじゃない」

「人払いの呪文だっけ、まああのときも使用していたな」

「そうなのね、でもわたしはあんまりしらないかも」

「夜遅くまで俺たちはテントを建てているのにな」

「まあ君となら悪くないよ」

「悪魔ってなら俺とお前しかこの学校に知る人はいないよ」

承引時しょういんじ君、君ってもしかしてトラブルメーカー?」

「なんで俺が発端になるんだよ」

「だって、君、いつも何かに追われているじゃん」

「ななななんだって」

「ほら自覚あるんだ」

「ねーよ、実際俺たちは親がいないからな、面倒ごとはこの生徒会に押しつけられたんだよ」

「話そらすのうまいね」

 そして阿弥陀がよってきた。

「二人きりだね」

「へんなことは考えてない」

「うそ」

「ほんとだ」

「じゃあ付き合ってって言ったら」

「いいよ、ほらあの件で力あるんだからそこ持て」

 承諾した。それよりもあのときは彼女に助けられた。

 それはいつもの九月のゴールデンタイム中。

 彼女はとある化け物に襲われた。

 原因は彼女事態にある。

 だから介入した。

 だって好きだったから。

 それもあるし、人間は一人では生きてけない。

 それよりも彼女に相当肩入れしていた。

 彼女は容姿端麗であり、一年で生徒会のお偉いさんになる素質もあり、お眼鏡をかけていて、なによりも、かわいそうだった。

 だから彼女を助けた。

 無力な何も失うものがない僕が唯一助けられた。

 だから相当彼女といる時間が長くなった。

 たったそれだけだ。

 それだけで、終わってしまう物語でもある。

「そういえばだな」

「だめよ、男に二言なんてないのだから」

 付き合うのは考えさせてって言おうと思ったのに。

 なんで思考が読めるんだ。

 といっても彼女の言っていること、感じていること、思考の先読み。

 それはとある化け物と融合して手に入れたものだ。 僕たちの間ではそれを悪魔と呼んでいる。

 他人の心がわからない彼女にとって、それは救いのようなものだろう。

 決して間違えているとは思わない。

 それを、、、取り込んだ彼女に、間違いだなんて僕は言えない。

 そうして僕らは帰った。

 明日は九月初めの運動会。

 コロナで客はこない。

 そんなものに、全力を尽くす先生。

 そして校内記録を目指す少女。

 僕らは確かに日常の中にいた。

 青春という瞬く間に流れる、日常の中にいたのだった。


 僕は夜道を歩いていた。

 なんだここは。

 光が消えては光りを繰り返していた。

 街頭が壊れているのか、電柱が壊れているのかわからなかった。

「おやおや、どうにも、君がここに来てしまうとは」

 この声は。

 僕は恐る恐る後ろを振り向く。

「Hallucinatiantorを従えただけはあるね」

 アイツだった。

「目の前に女の子がいるんだ。それもかなりの力をもったね、悪魔の所業かなこれは」

 アイツの名前はわからない。

 でも一つ言えること。

 それは悪魔と人間の橋を作ろうとするもの。

「そのまま無視をするのもいい、だが君はできないだろうね」

 そうやって広がった景色は――

 ――あまりにも悲惨であった。

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