第11話
相手の2球目のサーブは1球目と似たようなフォーム打ち出された。
桐場は先ほどよりも強く下をこするように打ち返すと今度は球が大きく跳ね上がる。
次の瞬間、カッコーンと高い音とともに球が桐場の横を通り過ぎた。
桐場にサーブが移るが相手はいともたやすく桐場のサーブを打ち返し結局点が取れないまま試合は進んでいく。
(うん、手も足もでない)
得点版の数字が8-1になったところで改めて思った。
勝てるなんて思っていなかったが実際に試合している中で強く実感する。
(でもこのまま終わるのも嫌だな)
せめて反撃とまではいかないが相手に一矢報いてやりたいなと思う。
今のところ相手のサーブを返した時球が上がる割合が多い、全ての球が上がることは無いが沈む球は割合が少ない、そして返せないことはない。
ならと、桐場は思う。
一度くらいなら打ち返すことができるのではないかと。
(大丈夫、見たことある)
集中して相手の球を見る、沖田が最初に桐場に見せた時はよく球を見ていた。
そして、思いっきり球の上をこするようにラケットを振りぬく。
カン、と甲高い音共に球は沈むことも上がることもなく相手のコート端に目掛け打ち返される。
相手は驚きの表情に替え急いで打ち返そうとするが届かず、球はコートギリギリで一度バンドしてそのまま飛んで行った。
得点版が8-2になる。
(よっし!!)
心中では大きく叫びながら小さくガッツポーズをする。
1点取れたのは偶然だろう。相手が油断していて反応できなかったこと、打った球がコートのギリギリ入ったこと、いくつかの偶然が重なって取れた1点。
それでも桐場はとても嬉しかった。
■
その後、気を引き締め直した相手によって桐場は一度も点を取ることなく試合が終わり、桐場たちの大会も終わった。
大会後、今大会で引退する沖田の言葉を聞き桐場はこのまま続けていこうと、部活に入ろうと思った。
球状のチェス 赤紫 井戸 @sorawaaoi
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