第10話
その後も桐場は練習にできるだけ参加し続け、気づけば大会を迎えていた。
「よーし今日はみんな全力を出し切っていこー」
「「「「はい」」」」
沖田の拳をつけ挙げながら言うと、部員たちはそろって返事をした。
「今日の試合で僕はこの部を引退する、つまり最後の大会になる」
「あ、そうか」
沖田から言われて初めて桐場は沖田が最後の大会になることに気付いた。
「これも桐場君のおかげだ、君が大会に参加してくれると言ってくれなかったら僕はこの大会に出ることができず心残りになっていたと思う。本当にありがとう」
■
大会はスムーズに進んでいき、ついに桐場達の試合が始まろうとしていた。
試合の順番は最初の話にあったように最後が桐場で、1番目に佐々木、次に岡崎、沖田、鈴木で試合が進む。
「相手の高校って強いんですか?」
お互いに礼をした後、佐々木と岡崎の試合が始まり、後ろで試合の様子見ていて、桐場は気になり沖田に聞いた。
「いやそこまでの強くないかな?油断はできないけどね」
沖田の言う通り試合は終始佐々木と岡崎の優勢で終了し、その後の沖田の試合も危うさが無くすんなりと一回戦目は終了した。
その後、二回戦目も桐場たちのストレートで勝ち進み三回戦目を迎えていた。
「桐場君、次の試合は君の番が来るかもしれないね」
三回戦目が始まる前に沖田が桐場に伝える。
「次の相手強いんですか?」
「うん、去年の優勝校。めちゃくちゃ強い」
「それは確かに僕の出番がきそうですね」
緊張から少し桐場の顔が強張る。
「そんな緊張しなくていいぞ桐場。初めて部活に来た帰りに言ったろ、すごい試合が見れるって今がその時なんだ、何しろ相手は去年の優勝校、過去一の迫力があると思うぞ」
「そうだな」
「それにみんなベストを尽くすつもりだ、案外出番はないかもしれないな」
そう言って笑う鈴木を見て桐場の強張った顔が少し緩んだ。
■
しかし、現実は残酷なものであり佐々木と岡崎は相手に手も足も出ずほぼストレートで負け、沖田がギリギリの勝利、鈴木は苦戦するも勝利をおさめ沖田の予想通りに桐場の番が回ってきた。
「楽しんできてね」
沖田に背中を押され桐場は卓球台に向かった。
桐場の試合のサーブは相手の選手から始まった。
カッと鋭い音を鳴らし相手はサーブを打ってくる。
それに対して桐場はツッツキで打ち返すことを選んだ。
桐場にはまだサーブの回転を判断するほどの実力がいない。実際今近づいている球の回転が何なのかわからなかった。しかし、回転がかかっているのであれば普通に打ち返してもだめなことはわかっていた。だからツッツキを選んだ。
(重っ)
球が桐場のラケットに当たった瞬間鉛玉を打ったかのような錯覚を感じる。
相手のチャンスボールにならないようにできるだけ慎重に打ち返すが、球はラケットから離れた瞬間ネットに吸い込まれてしまった。
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