第8話

桐場が卓球部の練習に参加してから一週間がたったころ沖田が突然の言い出した。

「よし、今日は部内で大会をしようと思います」

それは各々が基礎練習を終えてそれぞれの練習に取り掛かろうとしていた時だった。

「よっしゃー」

その言葉にいち早く反応をしたのは鈴木。

佐々木も遅れながら似たような反応をする。

岡崎はあからさまに面倒くさそうな顔した。

桐場は少し顔に不安が陰る。

「ルールは総当たりで、3セット先取、試合をしてない人は審判と得点係をやってもらうね。ちなみに桐場君は何か質問ある?」

「えーと、前の見た練習試合とおんなじ流れでいいんですか?」

「うん、それで大丈夫だよ」

「わかりました。あと審判って何やればいいんです?」

「試合をよく見てどっちに点数が入ったか判断すればいいよ。大会でも審判をする可能性があるから今のうちやってみるといい経験になるよ」

「わかりました、もう大丈夫です」

「よし、じゃあさっそく大会を始めようか」



くじ引きで最初の対戦組み合わせを決めると、桐場と岡崎、佐々木と沖田、審判は鈴木となった。

2組がそれぞれの卓球台に立ち試合の準備をする。

「沖田部長、僕はどっちの台につけばいいですか?」

「桐場君の台についてあげて」

「わかりました」

鈴木は桐場がいる台の真ん中の横に立つと得点版の準備をし始めた。

鈴木の準備が終わると桐場と岡崎はサーブ権のじゃんけんをする。

じゃんけんの結果最初のサーブ権は桐場ものとなった。

「よし、じゃあ始めっ」

「よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします」

岡崎のあいさつに少し慌てて桐場も返す。

桐場にとって初めの試合が始まった。

桐場が出した最初のサーブはこの一週間で唯一覚えた下回転のサーブだった。

しかし、それを岡崎はいともたやすく返す。

二人にラリーはしばらく続くが、

「あっ」

「1-0」

やがて桐場のミスで1点が岡崎に入る。

2回目のサーブも先ほど同じように何度かラリーが続き岡崎に点数が入った。

そして、岡崎にサーブ権が移る。

「サっ」

掛け声とともに出されたサーブに桐場は身構えて打ち返す。

思っていた以上に簡単にサーブを打ち返せて少し拍子抜けするがすぐに気を引き締めて返ってくるボールに集中する。

これも何度かラリーが続き岡崎が点を取る。

順調だと、桐場は初めは感じていたが、試合が進んでいくにつれ岩化に気付き始めた。

(おかしい)

桐場がそう思ったのは1セット目が終わりそうな時だった。

(ラリーがあまりにも続きすぎている。最初は1週間練習した成果が出たのかと嬉しくなっていたけど、冷静に考えれば相手は少なくとも去年から卓球を続けていたはず、それなのに毎回ラリーが続いてる。いくら何でもおかしくないか)

そんな疑問が出てくるが何もわからないまま、ラリーが続くものの点数が取れないという状況が続き1セット目は11-1という結果で終えた。

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