第5話

次の日の放課後、桐場と鈴木は卓球の顧問に仮に入部届を出した。

顧問の先生はありがとね、言って仮入部届を受けっとった。

その後二人は卓球部の練習場所である体育館に向かった。

「というわけで桐場君が大会まで卓球部に入ってくれましたー。はい拍手―」

ぱちぱちぱちぱち。

小さな拍手が起きる。

「それじゃ桐場君も大会に出てくれることになったことだし改めて6月末にある大会向けて練習を始めようか。とりあえず桐場君はボールに慣れてもらうためにリフティングしてもらね。はい、これ」

沖田は桐場にラケットとボールを渡した。

「とりあえずこんな感じでフォア面だけで連続で20回打ち続けてみて」

お手本として沖田が実践して見せる。

ボールはまっすぐラケットの上で跳ね、一定のリズムで心地よい音が鳴る。

「それができたら、次はバック、バックとフォアを交互でそれぞれ20回ずつ連続でやってみて」

「わかりました」

「他は準備運動をした後いつも通り練習で」

「「はい」」「へい」

沖田が他の三人にも指示を出すと、各々準備運動をし始めた。

その光景を横目に桐場もリフティングを始めた。

「うお、っと」

いざリフティングを始めると思った以上にうまくいかないもので、ボールがあらぬ方向へ飛んでいってしまう。

何度か準備運動中の沖田達のほうへと飛んで行ったりしたが、ラケットの角度のコツをつかむと沖田がやったように綺麗に打てるようになり、20回連続でリフティングすることができた。

「桐場先輩、終わるの早いですね」

準備運動を終えて、その光景を見ていた佐々木が驚いた様子で言った。

「そう?」

「先輩、今日初めて卓球するんですよね?だったら早いと思いますよ。僕が初めてやった時はそんな綺麗にリフティングできなかったですよ」

すごいです、と佐々木が褒める。

桐場はお礼を言って今度はバックでリフティングを始める。

最初はうまくいかなかったがフォア同様、桐場はコツをつかみ直ぐに20回こなす。

「やっぱりすごいです!普通そんなに早くできませんよ!」

「そ、そうかな」

「はい、すごいです!」

少し佐々木が興奮気味に言う。

(練習に参加しなくていいのか?)

少し佐々木のことが心配になり、鈴木と岡崎と沖田達のほうを見ると1つの台に鈴木と岡崎対沖田の2対1の形で練習していた。

「部長に見てろ、って言われたの?」

「まぁ、そんな感じです。部長にうまくいってなかったらコツを教えてあげてとか言われましたけど、必要なさそうですね。桐場先輩だった多分両面のリフティングもすぐに終わると思いますよ」

実際、桐場はすぐに両面を使ったリフティングもコツをすぐにつかみ20回をすぐに終わらせた。

「やっぱすごいですね」

「ありがと」

「本当は終わったら、ラリーを教えてと言われてるんですが…、桐場先輩これやってみてください」

佐々木が我慢できない様子で言うと、フォア面でリフティングを何回すると少し高くボール打ち上げた。

落ちてきたボールに佐々木が横からラケットをボールの下に滑らせるとボールは音もなく、一度も跳ねずに佐々木のラケットの上に静かに転がるように乗った。

「……」

目の前でいともたやすく起きた光景に桐場は驚きで言葉が出なかった。

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