第3話
「次はフォアとバック、ツッツキについて教えるね」
戻ってきた沖田が少し照れて顔をして言った。
「本当はもっといっぱい玉の打ち方があるんだけど、とりあえず基礎のこの三つ、佐々木君もっかい球だしてくれる?」
「次は強打を打たないでくださいよ」
佐々木が少し疑うように返事をする。
「大丈夫大丈夫、普通のラリーだから」
「わかりました」
佐々木は先ほど同じようにゆっくりと球をだした。
それを沖田は先ほどとは違い、ラケットを立て表面で同じような速度で球を打ち返す。
カンコンカンコン。
心地よいリズムで佐々木と沖田のラリーが続く。
「これがフォア、ラケットの表面でボールを打ち返す」
たしかに、沖田と佐々木はラケットの表面しか使わずラリーを続けていた。
「次にバック」
沖田が今までクロスの方向にしか打っていなかったボールを今度は正面に打ち返すと、佐々木は体の外側で構えていたラケットを体の内側にすぐさまに裏面が見えるようにラケットを立てて構えて、返ってきたボールを打ち返す。
沖田のほうを見ると佐々木と同じような構えになっており沖田もラケットの裏面を使い打ち返す。
「バックはラケットの表面を使い打ち返すこと、この二つは卓球のもっとも基礎となる打ち方でこれができないと練習にも試合にもならない」
そう言った沖田の表情は先ほどの照れた顔とは違い真剣な表情をしていた。
「最後にツッツキを教えるね」
「ツッツキ…」
聞きなれない打ち方に桐場は復唱する。
「そう、ツッツキ。卓球をやってないとどういう打ち方わかりずらいと思うけど」
返ってきたボールを沖田は素手でつかみサーブの構えになる。
「これも基礎の打ち方なんだけどさっき見せたフォア、バックとは違って回転を意識しないといけない」
沖田がボールを投げる今までのサーブとは違いボールの下をこすりサーブをだした。
佐々木もさっきまでようにラケット立てて打たず、寝かせるようにして打ち返す。
フォアとバックのラリーとは少し地味な光景だった。
「さっきまでと違って、今このボールには下回転がかかってツッツキはこっちも回転で打つ方法だよ。だから失敗すると…ほら」
沖田の打ったボールはネットに吸い込まれるように落ちた。
「地味かもしれないけどとても重要な打ち方なんだよ」
「すごいですね、フォアとバックとは違ってなんかこう繊細さみたいなもの感じました」
「ははは、いい感想だね。このツッツキは見た目以上に難しいんだ、慣れないとラリーすらできない。さて、取りあえず基本的なことは教えたし、そろそろ見たくなくない?」
「なにをですか?」
沖田は少しニヤっと笑いながら
「試合だよ試合」
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