21、奏多

「どら、ちっとそれ、見せてみ。」

 朝食の最後のパンを齧りながらザナンが顎をしゃくった先には、俺の担いで来た荷物がある。素直に荷物をそちらへ押しやると、ザナンは手慣れた様子で中身をテーブルへと並べていく。

 俺は慌てて、テーブルの空いた食器をまとめて、端へ押しやった。


 この荷物は琴葉が詰めたもので、結構な重量だったが、俺はその中身について、詳細を知らされなかった。

「何かごちゃごちゃで説明しにくいけど、ザナンに見せれば分かるはずだから。」とは琴葉の談だ。


 俺も琴葉にそんな風に思われたい。それにはもっと勉強して経験も積んで、更に今より本を読んだりして雑学も増やそう。それから…。そんな思考を巡らしている内に、ザナンの目利きが済んだ。


「何かごちゃごちゃしてるから個別の説明は省略な。琴葉ちゃんは分かってんだろ。全部で切り良く五十万ギル。何か大変そうだからな。今回限りの応援価格だぞ。」


 ギルはこの国の通貨で、ニ十万ギルが庶民が余裕を持って一月暮らせる目安となる。琴葉の予想買取価格は三十五万ギルだったので、正しく応援価格だ。

 ザナンには数年前、ひょんな事から俺達の“才無し”を知られていた。この応援価格は、俺達に対する彼なりの気遣いなのだろう。世の中、金の力で解決出来る問題は意外と多いものだ。


「ザナン…。」

「どうした。感激で声も出ないか。」

「ザナンも、人の子だったんだね…。」


 直後、俺は絶対来るだろうと予測していた後頭部への一撃から、するっと身をかわした。

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