20、奏多
そして、俺が驚いたのは、扉を閉めた直後だった。
テーブルで香茶を二人分注ぎながら、ザナンはニヤリとして言った。
「仲介屋を使いましょう。ザナンに依頼に行ってくれるかしら。出来れば、早朝。但し、目立たない様に気をつけて。」
まるでその場にいたみたいに、琴葉の口調そのままだった。
「お前ね、俺が知らないと思う?五日で十人。今日から薬市だろ。絶対来ると思って、待ってたんだよ。」
それが証拠とばかりに、テーブルには二人分の朝食が準備されていた。その立ち登る湯気が、到着のタイミングまで分かっていたと告げている。
「寝起き丸出しだったじゃん…。」
俺が呟くと、
「目立つなって言われてんのに走るからだろ。いくら静かに走ったっても、この時間じゃ目立つだろうが。尾行でもされててみろ、友達だと思われるだろ。流石に巻き添えはごめんだよ。」
ごもっとも。
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