19、奏多

 コンコン、コン、コンコン。

 そっと、仕事依頼の合図である回数と間で、仲介屋の扉を叩く。少し不安になる程の間があって、扉は開かれた。


「…あれ、誰かと思ったら奏多じゃねえの。何してんの、こんな所で。」

「だから、仕事だよ。姉さんからの依頼なんだけど。」

「あー…、琴葉ちゃんな。今日は一緒じゃねえの?美人じゃん。琴葉ちゃん。見たいわー。」


 寝起きを隠そうともせず無精髭を掻きつつ話す、やたらと軽い感じのこのおっさんは、ザナン。只の変なおっさんにしか見えないが、なかなかどうして、仕事の腕は確かだ。琴葉は自身の目が効かない品がある時は、大抵ザナンに相談していて、必要があれば依頼に繋げるといった仲だ。


「姉さんはまだ夢の中だよ。馬車の疲れもあるだろうからね。僕で我慢しといてよ。」

「それもそうか。本当、お前は早起きだね。まあ、仕事なら、中入れば。朝飯ぐらい食ってけよ。」

 そう言うと、ザナンは大きな欠伸を一つして、俺を家の中に招き入れた。

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