17、奏多

 翌朝、俺は日の出よりも前に身支度を整えた。琴葉は夢見の問題で、朝日が登って暫く経つまでは起床出来ない。見れば、夜明けの近付いた今、眉間に少し皺が寄り、既にうなされ始めている。せめて上掛けを直してやるぐらいの事しか出来ないのがもどかしい。


 もっと幼い頃はこうではなかった。琴葉が今みたいな夢見をする様になったのは精々この数年の事で、今回こそは何とか説得して医師に診せたいと思っていた。が、昨日のカイルとのやり取りを考えれば、今回も諦めるしかなさそうだ。


 出来れば毎朝そうする様に琴葉の側に付いていたいが、当の琴葉から早朝の仕事を言付かっていて、今朝ばかりはそうもいかない。昨日の日中、琴葉が懸命に考えた売買計画は結局、カイルの持ち込んだ情報によって、そのほとんどを変更した。


 なるべく早く片付けるべき事を片付けて、琴葉が起き出す頃には側にいてやりたい。例えそれが、俺の自己満足でも。

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