赤い糸
あなたは、赤い糸を信じていますか?
私は信じていますよ。
だって、私の指には赤い糸が、ちゃぁんと付いているんだもの。
「おばあちゃん!」
「はぁい」
駆け寄る私におばあちゃんは優しく微笑んだ。
シワシワになるほどお年寄りのおばあちゃんは、私が生まれるずっと前に亡くなった、おじいちゃんのことが大好き。
かっこいい話や、優しい話、何気ない日常の話。
たくさん、たくさん聞いて、私はおじいちゃんに会ってみたくてしょうがない。
でもそれは一生叶わなくて、ちょっぴり寂しいの。
「おじいちゃんはどんな人?」
想像でも良いから会いたくて、何度も聞いた問いだ。
おばあちゃんはいつも、嬉しそうに、ちょっと寂しそうに話す。
「おじいちゃんはね、普段はきりりとした面立ちが凛々しくて、笑うと八重歯が見えてかわいいの。優しい顔は春風のように暖かくて、おばあちゃんに甘いものだから、怒った顔はあまり怖くなかったわ。
嫌なことがあったら隠そうとするけど、おばあちゃんは隠し事が苦手だったから、いつもおじいちゃんにバレて、抱きしめてくれたわ。逆におじいちゃんが苦しい時は、おばあちゃんが抱きしめてあげてたのよ。
あなたのお母さんがお腹にできた時は、家事は全部俺がやる! なんて張り切っちゃって。失敗もいっぱいしてたけど、頑張ってた。生まれた時は、泣いて喜ぶものだから、もらい泣きしちゃって、一緒に嬉し泣きしてたの。
おじいちゃんはね、きっとあなたにも会いたかったはずだわ。
だって、太陽みたいに暖かくて、家族が大好きな人だから。」
そう言っておばあちゃんは、左手の薬指に巻かれた赤い糸に触れた。
昔はお金が無くて指輪が買えなかったけど、恋人の証が欲しくて、運命の赤い糸に擬えて意図を巻いた。
結婚する頃には買えるくらいになったけど、おばあちゃんがこのままがいいって言ったから、おじいちゃんとおばあちゃんは、結婚指輪の代わりに、赤い糸を巻いたんだって。
私もいつか、赤い糸の相手に会えるかな?
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