第10話 孝志のスキル



「ではこれより勇者の皆にはステータスを確認して貰いたいと思う」


ユリウスさんがこちらにやって来てそう言った。黒いマントを羽織った騎士の風貌……見るからに強そうな感じがする。でも若干ナルシストっぽいなこの人。


それに──


「……ふふ」


「……?」


なんかユリウスさんと一緒に着いて来たアリアンさんが俺に向けて笑顔で手を振ってるんだけど……もしかして気に入られてる?

物凄い美人に気に入られるとか、死ぬほど嬉しいんだけど……でも俺の顔面16位なのになんで?



──雄星の無礼な働きで、昨日は怒り狂ってしまったアリアンも、孝志がユリウスを指導者として推した……そのお陰で気を紛らわす事が出来ていた。

王国民ならば、殆どの人間がユリウスの良さを知っているので、彼らが如何にユリウスを褒め称えようとも関心はない……しかし、異世界からやって来た勇者が相手なら別の話。

なんの情報も持たない松本孝志が、極めて美しい自分に惹きつけられる事なく、真っ先にユリウスの名前を挙げたのが本当に嬉しかったのだ。


それは国王も同じだった。国王ゼクスのユリウスへ対する信頼はこの世の誰よりも厚い。

今日、最後に見せたやり取りが、孝志の好感度を飛躍させたのである。



「ほら、これは孝志の分だ」


「どうも……」

(いきなり名前呼びとか馴れ馴れしいな)



──ユリウスに渡されたカードを手に持つ孝志。

それは免許証やキャッシュカード位の大きさのプレートで、五人の勇者それぞれに配られた。


「………」


そして孝志は離れた場所で様子を伺っているマリアの方を見た。


(マリア王女に、橘達と別々で訓練させて貰える約束を反故にされたと思ったんだけど、今からステータスの確認をするから情報共有の為に集められた訳か)



俺は配られたステータスカードを翳して見る。

どうやらこれを使って自分のステータスを確認する事ができるらしい。いやほんと異世界って感じ。


俺は自らのステータスを確認してみる事にした。

そう……俺には何となく分かる……ステータスを観る為の方法を。アニメで見たから。



「ステータス!」


こうやって叫ぶと──何も起こらない。

話が違うじゃねーか。



「え、ちょ、急にどうしたの?後ろにボタン有るだろ?それを押して確認するんだよ?ははは」


「うぐっ」


ユ、ユリウスさんよ、そんな笑わなくても良いじゃない。


だってアニメがさぁ……アニメだぜ?

俺は悪くねぇよ。



しかも、離れた所に居る第一王女は冷めた目でこちらを見ているし……あの目嫌だ。

俺って今が思春期だから簡単に傷付くんだぞ?


隣の腹黒マリア王女に至っては顔だけを後ろに向け、肩を震わせていた。あれもう絶対笑ってる。

俺思春期だからなマジで。



「何?急にどうしたの松本?相変わらず意味分からないのよアイツ」


「み、美咲ちゃん失礼だよ。確かにおかしかったけど、彼なりのユーモアだよきっと!」


奥本と中岸が俺に対してこんな感想を漏らす。

何気にこの世界に来て初絡みである。

ずっと無視してた癖に、こちらの失態にはきっちり反応してくれるらしい……マジムカつくんですけど。



「やれやれ、そんなに目立ちたいのかね」


……橘雄星にだけは言われたくねぇから!!


クソッ!!皆して俺のメンタル傷つけ過ぎだろさっきから……いや全部ユリウスとか言う奴の所為だ。こいつが笑うから。



「ユリウスさん!笑わなくてもいいじゃないですか!そもそも何も説明せずにこんな物を渡してきたユリウスさんがおかしいですよ!」


みんなから馬鹿にされる中、穂花ちゃんだけが俺を庇う様な事を言ってくれた。

この流れで庇うのは根性が居るだけろうに……しかも俺が思ってる事をそっくりそのまま言ってくれたっ!


穂花ちゃんもうマジ天使!──てか本気で嬉しいんだけど……もう俺の中で一番可愛い異性は間違いなく穂花ちゃんだわ。



「ユリウス……その態度はどうかと思うぞ?」


ア、アリアンさんまで俺を庇ってくれる……もう間違いなく良い人だよ。昨日は恐ろしい人かと思っていたけど、そんな事は絶対ない。

もう穂花ちゃん、アリアンさん、ダイアナさんが居れば大丈夫だなっ!



「……わ、わりぃ、今までに無い反応だったからついな。みんな異世界人だし配慮に欠けていたわ……すまなかったな松本孝志。まさか周りがこんな反応になるとは思わなかったんだ。ましてや第二王女まで」


──とユリウスは素直に謝罪し、最後にチラッと第二王女マリアを見た。

それに対してマリアは『しまった』と言わんばかりの表情を一瞬みせてすぐに笑うのをやめる。

ユリウス的にネリーと違ってマリアは礼節をしっかり弁えた人物だと思っている。なので客人の失態を笑っていたのを本当に意外と思っていた。

最初に笑ったのは自分の癖に、偉そうにもそんな事を考えている。



尤も、ユリウスが前日の孝志とマリアのやり取りを見ていれば違った印象になったのだろうが……ただ、マリア本人としても公の場で笑ってしまうほど孝志に入れ込んでいる自分自身に驚いていた──



……気を取り直して、俺は今度こそ自身のステータス確認してみる事にした。たった今説明された通りカードの裏にあるボタンを押す。


「おおっ」


すると、目の前にプロット画面が出現し、そこには俺の能力についての詳細が記載されていた。


松本孝志

称号:勇者

種族:人間

レベル:5

腕力 F(12)

速度 F(12)

魔力 E(34)

知力 C(112)

技術 D(72)

抵抗 E(35)

精神 S(500)


スキル

豪運 逆転の秘策 危険察知 ???





……精神力が半端ないって。




てか全体的に低くね?






ーーーーーーー


豪運

非常に運が良い。


逆転の秘策

追い詰められた状況において知力・技術・抵抗・精神のパラメーターが大幅に上昇する。

ただし、肝心の身体能力パラメーターは上昇しない。


危険察知

自分の身に起こる危険を事前に察知する。

危険度が高い状況なほど訪れる危険の詳細が鮮明になる。


???

詳細不明。

所有者が能力発動後に詳しい記載がなされる。


F 1〜20

E 21〜50

D 51〜90

C 91〜160

B 161〜299

A 300〜499

S 500






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