第46話 聖 おかえり、ネイヤ
ここデモンパレスに来てからは、ネイヤのそばにはカノンがいつも張り付いていた。テュカもこれまでネイヤの事をよく見てくれていたが、カノンが奴隷になってからは、彼女の方がそばに居る機会が多いような気がする。
そのネイヤの怪我は、ソフィアの回復魔法のお陰で左腕も含めて無事回復した。ネイヤは目を覚ました途端、カノンを抱きしめてワンワン泣き出したのだ。トゥバルはあまりの号泣ぶりにビックリしたが、
「あ〜、そのなんだ、感動の再会を果たしているところで悪いんだが、そろそろ……」
「じゃあもう少しそっとしておいてくれ」
トゥバルがネイヤに話し掛けると、そっけなく断られた。グスン(泣)これはネイヤに泣かされたのでは決してない。二人の感動の再会に泣かされたのだ。
「そ、そっか分かった。ソフィア、とりあえずうまく回復したみたいだ。ありがとうな」
「いえ、とんでもありません、魔王様」
「そう謙遜するなよ、しかし、何か余所余所しいな、魔王様って」
「トゥバル様とお呼びしましょうか?」
「いや、トゥッチーと呼んでくれ」
「それは何だか嫌です」
冗談で言ったら、聖女に真顔で返された。あるよな、そういう事も。
「ではトゥバるんとお呼びしますね」
と思ったら冗談で返された。ジョークだよな?その呼び方。そうだよな?誰か、そうだと言ってくれ……。
「じゃあ俺もソフィやんと呼ぶことにする」
トゥバルも張り合って状態で返した。
ここによく分からない漫才コンビ、トゥバるん&ソフィやんが爆誕である。
「なぁなぁ、ソフィやん」
「何々、トゥバるん?」
「これいつまでやんの?」
「二人が落ち着くまでかなぁ?」
「いいなぁ、いいなぁ、私も仲間に入れて欲しいなぁ」
テュカが仲間にして欲しそうにこちらを見ている。
仲間にしてあげますか?
"はい" "いいえ"
トゥバルは迷わず"はい"を選んだ。
テュッチーは嬉しそうに仲間になった。
「なぁなぁ、聞いてよ、ソフィやん、テュッチー」
『何々、トゥバるん?』
二人とも息もピッタリで顎に手を当てて首を傾げている。まさにシンクロ状態である。
「あのさ〜、ソフィやんとテュッチーのオッパイってどっちが大きん?」
ビシッ。
二人のシンクロ状態にヒビが入った音が聞こえた気がした。あ、これ、聞いたらあかんネタや!
「わ、私の方がソフィやんより大きいです!」
「そ、そんな事はありません、私の方がテュッチーよりもありますよ、トゥバるん、ほらほら!!」
「私だって負けてません、寄せてあげるとどうですか?トゥバるん??」
「わ、分からん。どっちも一緒ぐらいに見えるが……」
「な、なら両方触って確かめてみて下さい」
「そうですよ、両方同時に触って、どちらが大きいかハッキリして下さい!!」
「えっ!?テュッチー、ソフィやん、マジで?」
「はい、大マジですよ、トゥバるん!!」
「そうです、さぁ!さぁ!!」
そう言いながらテュカとソフィアがおっぱいを寄せて、トゥバルに迫っていく。
トゥバルがその胸に両手を伸ばそうとしたその瞬間、
スパーン。
「痛っ!?」
トゥバルの後頭部に手刀が入った。
「いつまでアホな事やってんのさ?」
さっきまでエグエグ号泣していたネイヤさんが再起動しておられた。ここにツッコミネイさん、爆誕である。
「えっと、それでさっきからうるさいアンタは誰?」
「フンッ、聞いて驚け、俺は魔王だ!!」
エヘンと腰に手を当てて胸を張る。俺は魔王だ!!
「なるほど、お前はアホウと言うのだな、覚えておこう」
「ち、違うわっ!!ま・お・う、魔王だ、アーユーライ??」
「フフフッ、ネイヤさん、この人は本当に魔王様です。つい最近、覚醒したそうなんですよ」
カノンがネイヤと俺のやりとりに吹き出しながら説明してくれる。笑ってるカノンの顔は、付き物が取れたような嬉しそうな表情だ。
「カノン、良かったな」
トゥバルはそう言って、カノンの頭を撫でた。そしてネイヤに、
「おかえり、ネイヤ」
と言いながら握手を求めた。
「なんか馴れ馴れしい人だな、君は。だけどまぁ、今までお世話になったみたいだし、別にいっか。ただいまっ、魔王君」
そう言って、俺の手を取ってネイヤが笑った。
それはネイヤの事を心配していた皆にとって、最高の笑顔だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。