第34話 魔 デモンパレスにて
温泉に浸かり過ぎたプアレさんが湯当たりを起こしてまうという騒動があったりましたが、温泉をたっぷり堪能できた私達は、浴衣という服を着て、腰に手を当てて、コーヒー牛乳とやらを飲んでいます。
「プハァー、これ美味しい!!」
このコーヒー牛乳の飲み方は先代魔王様が考案されたそうです。確かに飲んだぁ!という実感が湧く飲み方です。流石、魔王様。
「奥方候補の皆様、温泉はいかがでございましたでしょうか?」
ブエルさんは私達が出るまで待って下さっていたようで、温泉上がりの私達に温泉での様子を聞いて下さいます。私はもちろん、
「とっても気持ち良かったです。ありがとうございます」
「私、美しくなりまして?」
「悪くはなかったわ、少し暑かったけれど」
「とても温まりましたですナァ」
「すごく癒されましでしゅ〜」
「あ〜、あぁ〜、い〜」
「そうですか、そうですか、それはようございました。では、お身体も温まりましたようですし、お食事のご用意がございますので、こちらにどうぞ」
ブエルさんが今度は私達を食事に案内して下さるようですが、どうもプアレさんの質問はスルーされてしまったようです。私はクスクスと少し笑ってしまいました。プアレさんは相変わらず、モゥモゥ言ってます。
パタパタとスリッパという履き物で音を立てながら、ブエルさんについて建物内を進んでいくと、大きな食堂のような所が目に入ってきました。すでに沢山の方々がお食事を楽しまれているようでした。しかも殆どの方が獣人や亜人、魔族や天使といった異種族の方々だったのです。
「こちらにどうぞ」
席が六席用意されていて、皆がそれぞれの席に座ります。
「お飲み物はどちらになさいますか?こちらのメニューの中からお選び下さい」
給仕の女の人が飲み物を聞いてくれます。あ、メイド服がとっても可愛いらしいです。私も着てみたいなぁなんて思っちゃいました。
「私とネイヤさんはアップルジュースでお願いします」
「では私はこちらのチェリーリキュールをいただきます」
「私はキャロットジュースがいいわ」
「ミャアはホットミルクがいいのナァ」
「私はレモネードが飲んでみたいでしゅ」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
プアレさんだけがお酒を選んだようです。私は嫌な予感がしましたが、それを止める権利はないので、黙っていました。
程なくして飲み物が立派なグラスに注がれて運ばれてきました。この透明なグラスは何て美しいのでしょうか。所々光を反射してキラキラ光っています。まるで光の妖精が祝福しているような感じがしました。
「それではいただきましょう」
プアレさんが音頭を取って下さいました。
皆でいただきま〜すと言いながら飲み物を口に運びます。
キンキンに冷やされたその飲み物は、今まで飲んだことのない味わいがしました。フルーツの香りが鼻を通り抜け、甘い味わいが舌の上を踊ります。喉越しが透き通っていて、スッと胃の中流れて溶けていきました。
「冷たくて、美味しい!!」
私はあまりの美味しさに無意識に呟いていました。飲み物一つ取っても、これだけの違いが出るなんて、温泉も含めて、このデモンパレスの技術力は凄いと思いました。
その後も驚きの連続でした。出てくるお料理の全てが美味しいのです。サラダにお刺身、唐揚げにソーセージ。特に私はオムレツにハマってしまいました。ふんわり卵に包まれたオムレツは、まさに食のユートピアです!!私の口の中で甘い卵に包まれた食材達が踊ります。私ははしたないと自覚しつつも、ついニマニマしながらオムレツを何度も頬張ってしまいました。エヘッ。自然と笑顔が溢れてしまいます。
プアレさんはお酒の影響か、お刺身を気に入ったようで美味しいですわ〜と言いながら食べています。ネイヤさんは骨付きの手羽先を好んで食べているようですし、ソニアさんはニンジンスープがお気に入りのようで、これはなかなか良い感じねって可愛らしくて、笑ってしまいました。ミャルロさんはお魚の煮物を骨までガジガジされてますし、カノンちゃんはチーズやヨーグルトが気に入ったようです。
皆それぞれ好きな食べ物に舌鼓を打ち、会話が弾みます。こんなに楽しい食事の時間は初めてです。皆が笑顔で、笑い合って、騒ぎ合って。
本当に美味しい食べ物って、人をこんなにも明るく楽しくしてくれるものなんだと実感しました。
こんな時間がずっと続けばいいのにと思う私なのでした。
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