第7話 テスト2

 俺は克樹かつきの忠告を考えた、考えたのだが答えを出せずにいたのだ。

 俺には7月上旬に始まるテストへの対処たいしょで手いっぱいだったのである。

 俺は、静香しずかに放課後の勉強会を中止しようかと尋ねたが

   「今度のテストは、私たちの交際がかかっているの。」

   「私もたまるのせいで成績落ちたなんてないようにするわ。」

   「私はあらたに勝ちたいの。」

と言ってゆずらなかった。

 それに俺の学力が上がったのか勉強会はスムーズに進んだ。

 俺は新にも同じように言った、新にはまた学年1位を取って欲しかった。

 すると新は

   「わざわざテストのために勉強はしていないから、心配はいらない。」

と言った。

 俺は結局、二人の好意に甘えることになった、かわいい彼女と湯上り美人の個人指導、これほど幸せなことはないのだから仕方がない。

 そしてテストははじまる、学年ドベの俺だが何とか真ん中くらいにはなりたいものだ。

 う~ん、問題の意味は分かる、答えもわかる、あれ、あれれれ・・・

今回のテスト、俺に合わせて問題簡単にしてないか?

 まぁ、分かるしいいか、というよりみんな満点ばかりだったりして

だが、テストを終えると難しかったと言っている連中がいる。

 前回の俺のように遊び倒していたのだろうか?

 静香がテストの出来を聞いて来る

   「テストどうだった7割くらいはできた。」

   「う~ん、10割かな。」

静香は目を丸くし

   「やればできるのね、さすが、たまる。」

と喜んでくれる。

 それを聞いていたクラスメートからどよめきが起きる

   「あの、たまるが」

   「うそだろー」

   「聞き間違えじゃなにのか」

ひそひそ聞えてくる、俺はバカだが、少し失礼である。


 帰宅すると母が待っていた。

   「テストの出来どうだったんだ?」

   「なぜか簡単な問題ばかりだったよ。」

俺は正直に答えたが、母の顔は疑いの色を濃くしている

   「新ちゃん、テストの問題どうだった。」

   「たぶん、応用ができないと難しいと思う。」

俺は、新、一体どんな恨みあるんですかと思いつつ、心当たりはあった、胸の谷間見ようとしたり見とれて話聞いていなかったり・・・有罪かな

   「たまる、新ちゃんこう言ってるよ、うそつくんじゃない!」

   「待ってください、叔母さま、たまるなら解ける問題でしたよ。」

俺は新がとりなしてくれたおかげで怒られずに済んだ。


 とうとう審判の日、いやテストの結果発表の日がやって来た。

 テストの結果が配られる。

 しかし、俺のテスト結果がなかった。

 担任の橋本はしもと先生が生徒指導室へ来るように言う。

 俺はデジャヴに襲われる、悪い予感しかしない。

 静香、新と克樹が心配そうに俺を見る、そして、クラスメートがざわつく。

 俺は重い足取りで生徒指導室へ行く、中に入ると橋本はしもと先生は機嫌きげんが良かった。

   「たまる、やってくれると信じていたぞ、学校創立以来のはじと言われたお前が

    なぁ。」

俺は教師たちの中で恥ずかしい生徒のようだ。

   「10番だ。」

   「へっ?」

   「お前の名前が張り出されるぞ。」

と言って、テストの結果を渡してくれた。

   「よく頑張った、先生はうれしいぞ。」

初めて高校でめられた。


教室に帰ると静香が駆け寄って来る、そして新、克樹が来た、俺は黙ってテスト結果を見せた

   「静香と新のおかげだ、ありがとう。」

礼を言う、新が笑顔で

   「たまるの努力も結果よ。」

静香が抱き着く

   「これでデート行けるね。」

新の笑顔が凍り付いた。


 放課後の勉強会から解放され、久しぶりに新と下校する

 テストの結果に母は喜んでくれた。

 ちなみに学年1位は新、2位が克樹、4位が静香である。


 風呂から上がり、部屋に戻った俺は久しぶりにゲームでもしようと思う、するとドアがノックされ、新が

   「入っていい。」

   「どうぞ。」

といつものやり取りの後、教科書とノートを持って入って来る

   「ゲームそれともあ・た・し?」

俺はたずねる

   「テスト終わったんだから勉強終わつたじゃないの?」

   「勉強の習慣出来たんだから続けましよ。」

新は言う

   「テストで悪い点取ったら元通りだもんな。」

   「ううん、たまるには私と同じ国公立大目指してもらうわ。」

   「えっ?」

   「私は、たまると将来を共にするために来たのよ。」

   「でも、俺には静香がいるよ。」

   「私、認めた覚えないわよ。」

俺は新が瀧脇たきわき高校へ来た意味を深く考えていなかった、新は人生をかけている、克樹の

   このままじゃ取り返しがつかなくなるぞ

という意味が分かってきた。



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