第4話 家庭訪問

 昼食を終えた午後、あらたが夕食を作るというこになり、俺は新の買い出しに付き合うことになった。

 近所のスーパーで、俺が荷物を持ち、新が商品を選ぶ、すれ違う客が新を見ていく、少し離れた所から

   「きれいな子ねー」

と言う声も聞こえてくる。

 俺は新が新妻にいづまというのも悪くないと思ってしまったが、俺には静香がいる、煩悩退散ぼんのうたいさん

 新の作った夕食は、うまかった、母は

   「これなら、いつでも結婚できるね。」

と新をほめる、新は

   「まだまだですわ、叔母さまに料理教えてもらわないといけませんわ。」

抜け目がない。

 風呂は母が完全に仕切っている、我が家ではラッキースケベは起こらないのだ

新の胸、ボリュームあったな、う~ん、気になる。


 翌日、俺は新と一緒に朝食を食べる。

 俺は新に釘をさす

   「今日は抱き着いたりして、騒ぎを起こさないでくれ。」

   「分かっているわ。」

   「ただ、静香しずかに立場と言うものを教えるだけよ。」

全然、分かっていなかった。

 俺は新と登校する途中、静香に会う、どうも待っていたようだ

   「おはよう、静香。」

   「たまる、おはよう。」

静香は俺の左側に来ると腕を組む、それを見た新も腕を組む、俺は

   「通行の邪魔だから腕を放してくれ」

とお願いする、しかし静香は

   「右腕を放せば問題ないわ。」

新は

   「左腕邪魔でしょ。」

と言い、校門まで、俺は二人に連行される、校門で教師に呼び止められる

   「君たち何しているんだ。」

   「生徒手帳を見せなさい。」

俺たち3人は、生徒手帳を差し出す

   「間瀬ませたまる、間瀬新、若宮静香わかみやしずか・・・」

教師は思い出すように氏名を読み上げる

   「あの、3人組か!通学中はもう少し離れて歩きなさい、くれぐれも面倒を起

    こすんじゃないぞ、から早く中に入りなさい。」

俺たちは教師の間でどんな扱いになっているのだろうか、それにて俺たちの存在がか?

とりあえす、教師の注意のおかげで俺は解放される。

教室に入ると担任がおり、俺と新を生徒指導室に呼び出す

   「たまる、日中、親御おやごさんは居るか?」

   「母がいます。」

   「なら、明日放課後、家庭訪問するから伝えておいてくれ。」

   「はい、分かりました。」

教室に戻ると静香が駆け寄り

   「たまる、大丈夫だった、この女のせいで変な誤解されていない。」

俺は心の中で変な誤解の半分は静香のせいですよと言う、代わりに新が言ってしまった

   「静香、あなたのせいで変な誤解をされているようですわ。」

   「何言っているの、あんたのせいでしょ。」

ここで既に担任が来ていることに気が付く、俺たちは何もなかったように席に着くが、担任の視線が痛い。

 担任は開口一番に

   「今朝、男女で腕を組んで登校した者がいる、近所の人は見ている、高校生ら

    しく通学するように」

俺に視線が集まる、クラスメートが俺のことをどう思っているか分かった瞬間である。

 午前中の授業は何とかやり過ごしたが、なぜかやたら指名された気がする。

 昼時間、新、静香と克樹かつきが俺の席に来る、親友は俺を見捨てずにいるようだ。

 俺と新の弁当の中身は一緒である、母が作ったのだから当然である、新が言う

   「お弁当どお?」

   「うん、美味しいよ。」

   「それ私が作ったの、良かった。」

静香の顔つきがみるみる険しくなる

   「私のも食べて、はい、あ~ん」

   「それあなたが作ったの?」

   「・・・」

静香は沈黙する、新は続ける

   「料理ができる女の子の方がいいよね、たまる。」

俺は

   「最近は、料理男子が持てるらしいぞ。」

とごまかす、さらに新は追い打ちをかける

   「叔母さまは、料理できる子が好きよ。」

静香は押し黙ってしまった、俺は

   「料理なんて覚えればいいんだから。」

何とかなぐさめようとする、静香は

   「うん、私、料理覚える、上手にできるようになったら、お弁当食べてね。」

元気を取り戻す、新は俺が静香を慰めたことが気に入らなかったようである。

 午後の授業もやはり俺が指名される、まぁ、たまるって呼びやすいし、いや違う、俺は教師たちに目をつけられているらしい

この状況は良くない、しかし、静香と新との間に板挟み状態では何ともならない。

 放課後、静香は先に帰って行った、料理を学ぶのだろう。

 俺と新は二人で下校する、新が聞く

   「あんな、弾丸だんがんのような子がいいの?」

   「新が現れる前は、おしとやかな子だったんだ、君が俺のことあきらめれば、元

    に戻るさ。」

   「あれがあの子の本性よ。」

   「君は1、2枚皮をかぶってそうだけど。」

俺が図星を突いてしまったのか、新は黙り込む。

 帰宅すると俺は母に明日担任が家庭訪問に来ることを伝えた。

 新は夕食の準備を手伝うようだ、俺は自分の部屋に戻る。

 俺は静香のことを考えている、もし今の静香のことを知っていたら告白していただろうか、でも静香が積極的になったのは新に対抗してのことだし、新を完全に拒絶していない俺のせいでもある、静香を好きなのは間違いない・・・

 ドアがノックされ新が

   「夕食の用意できたよ。」

とドアを開ける。

 俺は新を見てエプロン姿いいですと思ってしまう、俺のこの性格が問題らしい、だが健全な男子なら同じことを思うはずだ、思うに違いない。


 翌日、俺は新と一緒に朝食をる。

 俺は新に釘をさす

   「今日は生徒指導室に呼ばれないようにしよう。」

   「分かっているわ。」

   「あの弾丸娘が向かってこなければね。」

全然分かっていないようだ。

 俺と新、二人で登校していると静香に会う、一体何時から待っているのだろう

   「おはよう、たまる。」

   「おはよう、静香。」

挨拶して3人で歩く、校門では教師がしっかり見張っている。

 今日は順調だ、俺のためにこのまま過ぎてほしい、教室に着くと静香が

   「私、目玉焼き作れるようになったのよ。」

彼女は全く料理はだめらしい、前途多難ぜんとたなんだ。

 新が口をはさむ

   「目玉焼きなんて誰でも作れると思ってましたわ。」

   「それは、あなたの基準でしょ。」

静香と新がにらみあう、担任が咳払せきばらいをする。

 静香と新は自分の席に戻って行った。

 午前中の授業は何とかやり過ごした。

 昼時間になり昨日と同じように昼食を食べる。

 新が静香に仕掛けるが静香は挑発に乗らない、勝てないことが分かっているからだ、しかし、静香の両手は小刻みに震えている。

 午後は体育の授業があった、2組と合同で男子はバスケットボール、女子はバレーボールである。

 俺は男子から狙われているらしく、ボールを持つと、強烈きょうれつな体当たりを食らう。

 女子は静香と新がもめないように別チームにしたが、新が見学中の静香を狙ってスパイクを打ったとかでめている。

 放課後、また、静香は先に帰って行った。

 俺と新は二人で帰宅する、担任の家庭訪問の要件は容易に想像できた。

 帰宅すると母は化粧をして出てきた

   「おかしくないかい?」

母が聞くと

   「素敵ですわ、叔母さま。」

新がほめる。

 しばらくすると担任が訪れる。

 居間で担任と母が話をしている。

 俺と新は廊下で立ち聞きしているが聞えない、1時間ほどすると、母が

   「たまる、新ちゃんいるんだろ入ってきな。」

と声をかける、俺たちは居間に入って直立姿勢をとる。

   「二人とも先生たちに迷惑をかけているそうだね。」

   「新ちゃん、私はそんな子を嫁に欲しいとは思わないよ、今度、先生に迷惑かけたら新ちゃんの応援やめるよ、分かったかい。」

   「はい。」

   「バカ息子、携帯出しなさい。」

俺はスマホを母に渡す、すると静香の電話番号を出しかけ始める

   「静香さんですか、たまるの母です。」

   「担任の先生からいろいろ話を聞きましたよ。」

   「言い訳はしない、随分派手ずいぶんはでにしてるそうね、そんな子、たまると付き合わせ

    られません。」

   「最後まで話を聞きなさい、今度、先生に迷惑かけたら分かれてもらいますか

    ら、いいですね。」

静香のうろたえぶりが俺の脳裏に浮かぶ。

   「バカ息子、あんた何やっているんだふがいない、このままじゃ尻に敷かれる

    よ、何かあったらあんたが何とかしな。」

   「はい。」

我が家の頂点に君臨くんりんしているのは母で間違いない。

 母は担任に向き直ると

   「これでどうでしょうか?」

   「十分です。」

担任の顔が引きつっている。


 翌日から静香と新の表向きの小競り合いはなくなった。

 俺は担任に耳打ちされる

   「お前の母親、一体何者だ。」

   「俺の知る限り、一番怖い人です。」

と答えておいた。






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